自閉スペクトラム症(ASD)の特徴とは??0〜6歳の年齢別に子どもの行動特性を紹介
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神戸医療福祉専門学校の作業療法士科(4年制)は開校からの国家試験合格率は94.4%。 「その人らしい生活」を支える作業療法士。精神・身体・発達など幅広い分野で活躍する専門職として、実習や現場での支援経験をもとに、やりがいと可能性を伝えます。

自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつきの脳機能の偏りによって生じる発達障害の一つです。以前は自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などと個別の診断名が用いられていましたが、2013年に米国精神医学会(APA)が発表した「DSM-5」以降、これらの診断名が「自閉スペクトラム症」として統一されるようになりました。この変更は、症状の重さや知的障害の有無にかかわらず、自閉的な特性を持つ人々を連続体(スペクトラム)として捉えるという考え方に基づいています。

「スペクトラム」という言葉が示すように、自閉スペクトラム症の特性や現れ方は人それぞれで多様であり、グラデーションのように連続しているのが特徴です。そのため、特定の症状が極めて強く現れる人もいれば、軽度で気づきにくい人も存在します。

主な特性としては、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難さ」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」の2つが挙げられます。 これらの特性は幼少期から現れることが多く、一般的には3歳までに診断されるケースが多いです。しかし、知的障害を伴わない場合や言葉の発達が良好な場合は、小学校入学後や成人になってから初めて診断されることもあります。

自閉スペクトラム症の原因はまだ完全に解明されていませんが、遺伝的要因や胎児期・出生後の脳の発達における機能異常が複雑に関与していると考えられています。 親の育て方やしつけが原因ではないことが多くの研究で示されています。

自閉スペクトラム症の特徴

自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係や社会的コミュニケーションの困難、そして限定された反復する様式の行動、興味、活動という2つの主な特性を持つ発達障害です。これらは、米国精神医学会(APA)が発行した「DSM-5-TR」という診断基準によって定められています。以前は、知的障害の有無や症状によって細かく診断名が分かれていましたが、現在はこれらの境界はなく、上記2つの特性がみられる場合は「自閉スペクトラム症」として診断されます。具体的には、発達の早期からこれらの症状が認められ、社会生活に支障が生じていること、そしてこれらの障害が知的障害などでは説明できないことが診断の基準となります。つまり、自閉スペクトラム症は、生まれつきの脳機能の特性によるもので、その特性は個人差が大きいものの、社会生活において特定の困難を引き起こすことがあるのです。

対人関係

自閉スペクトラム症のある人は、他者とのコミュニケーションや対人関係の構築に困難を抱えることがあります。例えば、幼い時期から視線を合わせることが少なかったり、抱かれることを嫌がったりする場合があります。成長すると、一人で遊ぶことを好む傾向があり、家族以外の人間関係を築くことに抵抗を感じる人もいます。また、他者の表情や気持ちを読み取ることが苦手なため、会話のタイミングを逃したり、意図せず相手を傷つける言葉を発してしまったりすることもあります。これらの特性から、周囲からは「変わった人」と見なされ、結果的に社会的な孤立を招くことがあるのです。

言語

自閉スペクトラム症のある人は、言葉の発達が遅れる傾向があります。言葉の習得は個人差が大きいものの、他の子どもたちと比較して話し始めるのが遅れたり、言葉の使い方が独特であったりすることが特徴です。例えば、相手の言葉をそのまま繰り返す反響言語や、代名詞の使い方が入れ替わるなどの特徴が見られることがあります。会話が一方的になる傾向があり、自分の考えや感情を共有するよりも、要求を伝えるために言葉を使うことが多いです。声の抑揚や高さに特徴が出ることもあり、自閉スペクトラム症のコミュニケーションにおける言語の使い方は多岐にわたります。

行動・興味・活動

自閉スペクトラム症のある人は、決まった手順や習慣へのこだわりが強く、変化を嫌う傾向が見られます。特定のおもちゃや特定の行動(例:手をひらひらさせる、体を揺らすなど)を繰り返すことも特徴です。比較的症状が軽い場合でも、同じビデオを何度も見たり、毎食同じものを食べることに強くこだわったりすることもあります。また、非常に独特な興味を示すことがあり、例えば、特定の乗り物や特定のテーマに異常な関心を持つケースもみられます。これらのこだわりや反復行動は、自閉スペクトラムのある人にとって安心感をもたらす一方で、日常生活において周囲との摩擦を生む原因となることもあります。

知能

自閉スペクトラム症のある人の中には、ある程度の知的障害がみられる場合があり、知能指数(IQ)が70未満であることが多くを占めています。自閉スペクトラム症の人は、作業能力にばらつきがあるのが特徴です。たとえば、運動能力や空間認知能力は優れていても、言語能力は比較的低いという傾向が見られます。また、自閉スペクトラムのある子どもには、特定の分野で突出した能力を示すケースもあります。たとえば、複雑な暗算を速く正確にこなしたり、卓越した音楽の才能を持っていたりする人もいます。しかし、これらの能力を社会的な状況で活かすのが困難な場合があることも、自閉スペクトラム症の特徴として挙げられます。

感覚

自閉スペクトラム症(ASD)を持つ人は、脳の特性により感覚に著しい偏りが生じやすい傾向にあります。例えば、光、音、匂いといった外部刺激に対して過敏に反応したり、逆に痛みを感じにくかったり、手先の不器用さ(触覚鈍麻)が見られたりすることがあります。この感覚の偏りは個人差が大きく、すべての感覚が過敏な人もいれば、特定の感覚のみが過敏な人もいます。

国立障害者リハビリテーションセンターの研究によると、発達障害のある人々の中で最も問題が生じやすい感覚は聴覚であり、次いで視覚、触覚、嗅覚も多く見られることが報告されています。 このように、感覚の偏りが日常生活に与える影響は多岐にわたり、周囲の理解と適切なサポートが非常に重要となります。

自閉スペクトラム症が疑われる子どもの特徴

自閉スペクトラム症(ASD)の原因は、生まれつきの脳機能障害であるという説が有力です。このため、その特性は幼少期から現れるのも、自閉スペクトラム症(ASD)の1つの特徴といえます。自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションや対人関係の困難さ、特定の物事への強いこだわり、感覚の過敏さや鈍感さといった特徴が見られますが、その現れ方や程度には個人差が大きいです。

特に乳幼児期は、定型発達の子どもとの違いがわかりにくいため、保護者が異変に気づきにくいこともあります。しかし、専門家が発達の状況を注意深く観察することで、早期に特性を把握し、適切な支援に繋げることが可能です。早期に発見し、適切な療育を受けることで、子どもの成長や社会性の発達を促し、将来の自立に役立てることができます。

そこで、ここからは年齢別に自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる子どもの特徴を紹介します。0~1歳、2~3歳、4~6歳という年齢ごとの具体的な行動や反応について詳しく解説しますので、気になる点がある場合は参考にしてください。ただし、ここで紹介する特徴はあくまで目安であり、確定診断には専門機関での医学的評価が必要となることをご理解ください。

0〜1歳

自閉スペクトラム症(ASD)の特性や現れ方には大きな個人差がありますが、生後6ヶ月から1歳頃の乳幼児期からその兆候が見られることがあります。この時期に現れる特徴は、発達の個人差と区別が難しい場合も多いものの、早期発見と適切な支援のために重要なサインとなります。

具体的には、以下のような特徴が挙げられます。

目が合わない
自閉スペクトラム症の子どもは人への関心が弱く、アイコンタクトが少ない傾向があります。しかし、生後6ヶ月頃から目が合うようになることを考慮すると、乳児期においては発達の個人差も大きく、この時点で過度に心配する必要はありません。

抱っこを嫌がる
抱っこは、子どもが特定の人との間に愛着関係を築くための重要な行動の一つです。自閉スペクトラム症の子どもは、感覚が過敏であったり対人関係が苦手だったりするため、抱っこされると体を反らす「反り返り」を頻繁にすることがあります。

あやしても笑わない
他者との関わりによる自発的な笑顔が見られない場合、社交的なスキルの発達に遅れがある可能性が考えられます。

人見知りをしない・後追いをしない
人見知りや後追いは、他人を認識し、愛着形成が進む発達段階でみられる行動です。自閉スペクトラム症の子どもは人に対する関心が薄い傾向があるため、これらの発達段階が見られないことがあります。

寝つきが悪い
自閉スペクトラム症の子どもは、睡眠と覚醒のリズムが不規則になりやすく、乳児期から寝つきが悪いことが多いです。また、感覚過敏が睡眠を妨げる原因となることもあります。

これらの特徴は、あくまで自閉スペクトラム症の可能性を示すものであり、一つでも当てはまるからといってすぐに診断されるわけではありません。しかし、気になる行動が複数見られる場合や、その程度が強い場合は、専門機関への相談を検討することが大切です。

子どもが1歳半頃になると、各自治体で1歳6ヶ月児健康診査(1歳半健診)が実施されます。この健診では、心身の健康だけでなく発達の確認も行われ、言語や社会性の遅れ、つま先歩き、視線が合いにくいといったサインから、自閉スペクトラム症の可能性が指摘されることがあります。1歳半健診は、発達障害の早期発見に有効であると示唆されています。

2〜3歳

2〜3歳になると、自閉スペクトラム症(ASD)の診断が最も多くなる時期だと言われています。これは、この年齢になると子どもの言葉の発達が顕著になり、周囲の働きかけに対する反応も増えるため、行動特性に気づきやすくなるからです。この時期に自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる主な特徴として、まず対人関係における困難が挙げられます。例えば、名前を呼んでも反応しない、視線が合いにくい、指差した方向になかなか目を向けないといった様子が見られることがあります。また、抱っこや体に触られるのを嫌がることも特徴です。これは、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが人への関心が弱く、他者の働きかけへの反応が鈍かったり、愛着行動が苦手だったりするためと考えられます。

次に、言葉の発達においても特徴が見られます。言葉の遅れが見られる場合や、相手の言ったことをそのまま繰り返す反響言語(エコラリア)が見られることがあります。これにより、コミュニケーションが取りにくいと感じる場面が増えるでしょう。

さらに、行動や興味の面では、食べ物の好き嫌いが非常に激しいことがあります。感覚の過敏さや特定の物事へのこだわりが強いため、決まったものしか食べない、特定の服しか着ないといった強い執着が見られることがあります。また、欲しいものを自分の言葉や身振りで伝えられず、親の手を引っ張って目的のものを指し示す「クレーン現象」が見られることもあります。これは、指差しや言葉で自分の気持ちを伝えることが苦手な傾向にあるためです。

3歳頃には、1歳半健診と同様に、法律に基づいた3歳児健康診査(3歳健診)が実施されます。この3歳健診は、自閉スペクトラム症(ASD)が発見される重要な機会となることが多いです。これらの特徴に複数当てはまる場合や、気になる症状がある場合は、専門機関への相談を検討することが大切です。

4〜6歳

4〜6歳になると、幼稚園や保育園などで他の子どもたちとの集団生活が増え、特性による対人関係やコミュニケーションにおける困難がより顕著になる時期です。この時期の自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる主な特徴として、以下の点が挙げられます。

まず、「同じ遊びを繰り返す」ことや「特定のものごとやルールに強いこだわりがある」ことが特徴です。たとえば、車のおもちゃを常に一列に並べる、ドアの開閉を何度も繰り返すなど、日常生活や遊びにおいて特定のパターンへの執着が見られます。また、思い通りにならない場合に、大きな声を出す、手足をバタバタさせるなどの癇癪を起こすこともあります。

次に、「ごっこ遊びが苦手」な傾向があります。自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、他者の気持ちを理解したり、感情を共有したりすることが難しい特性があるため、架空の状況を設定して遊ぶごっこ遊びに抵抗を感じることが少なくありません。

さらに、「集団行動が苦手」で、同年代の友達と円滑に遊べないこともあります。多くの場合、一人遊びを好む傾向が強く、集団での活動に苦手意識を持つことがあります。また、相手の感情を読み取ることが難しいため、自分が話したいことだけを一方的に話すなど、他の子どもとの関わり方が偏ってしまうケースも見られます。

自閉スペクトラム症(ASD)の特性は人それぞれであり、素人が判断することは困難です。正式な診断には、小児神経科、児童精神科、小児科医などの専門家による医学的評価が必要となります。もし、上記のような気になる症状が複数見られる場合や、症状の数は少なくてもその程度が強く、日常生活に支障をきたしている場合は、一度医師や自治体の発達相談窓口などに相談することをおすすめします。

自閉スペクトラム症の原因とは

自閉スペクトラム症(ASD)の原因については、まだ完全に解明されていません。しかし、脳の機能や構造に違いがあることがわかっており、遺伝的な要因が複雑に関与していると考えられています。自閉スペクトラム症は、脳の発達段階における違いによって生じる特性であり、親の育て方や環境が原因で発症することはありません。また、出生前のウイルス感染や早産も危険因子となる可能性があり、未熟性の程度が高いほど、自閉スペクトラム症のリスクも高まるとされています。自閉症スペクトラムには様々な個人差があり、その程度や現れ方も人によって大きく異なります。

自閉スペクトラム症の診断

自閉スペクトラム症の診断は、保護者の方からの詳しい報告や、幼児を注意深く観察することによっておこなわれます。乳幼児期からの発達の経過を詳細に確認し、医師や専門家が総合的に評価します。自閉スペクトラム症のスクリーニング検査も活用され、より精密な検査が必要な幼児を特定するのに役立ちます。また、自閉スペクトラム症と関連する特定の遺伝子変異の有無を調べる遺伝子検査が行われることもありますが、これは診断の補助的な情報として用いられることがあります。これらの情報に基づいて、自閉症スペクトラムの診断が確定されるのです。

自閉スペクトラム症の治療方法

自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつきの脳機能障害が原因とされ、病気というよりは持って生まれた特性として捉えられています。そのため、薬で根本的に治療することはできません。しかし、医療と教育を組み合わせた「療育」によって、障害による生活上の困難を軽減し、社会適応能力を高めることは十分に可能です。療育は、自閉スペクトラム症の子どもたちの発達段階や特性に合わせて、個別化された支援を提供するものであり、自立した生活を送るためのスキル習得を促します。

療育の主な目的は、社会性やコミュニケーション能力の向上、特定の行動パターンや感覚過敏への対処、そして日常生活スキルの習得など多岐にわたります。例えば、対人関係の苦手さに対しては、ソーシャルスキルトレーニングを通じて、他者との適切な関わり方を学ぶことができます。また、特定の感覚過敏がある場合は、感覚統合療法によって、刺激への慣れや適応を促すアプローチが取られることもあります。さらに、日常生活において困りごとがあれば、専門家が個別の状況に応じて適切な対処法を提案し、家庭や学校と連携しながら支援を進めていきます。

具体的には、言語聴覚士による言葉やコミュニケーションの訓練、作業療法士による感覚統合や微細運動の訓練、心理士による行動療法やソーシャルスキルトレーニングなどが行われます。これらの専門職が連携し、子ども一人ひとりのニーズに合わせたプログラムを作成することで、自閉スペクトラム症を持つ子どもたちが、それぞれの発達段階に応じた支援を受け、社会の中でより豊かな生活を送れるようサポートしているのです。療育は早期に開始することが効果的であるとされており、早期介入によって、将来的な生活の質が大きく向上する可能性があります。

環境調節

日常生活や仕事環境の調整は、自閉スペクトラム症のある人が抱える困難を軽減するために重要です。例えば、コミュニケーションが必要な業務を避け、パソコンスキルを活かせる仕事を選ぶことで、特性を考慮した環境を整えることが可能です。また、口頭ではなくメールで指示をもらうことで、曖昧さによる誤解を防ぎ、具体的な指示に基づいて作業を進めることができます。スマートフォンを活用したアラーム機能やスケジュール機能も、日々のタスク管理に役立ちます。自分で対応が難しいと感じる場面では、周囲の人に助けを求めることも大切です。

行動療法

行動療法は、望ましい行動を増やし、問題となる行動を減らすことを目的とした治療法です。専門機関では、ソーシャルスキルトレーニングを通じて、具体的な行動をロールプレイで学ぶ認知行動療法の一種が提供されます。個別のカウンセリングや、ショートケア(デイケア)などのプログラムも行動療法の一環として用いられ、社会生活に必要なスキルを習得する支援が行われています。これらのアプローチにより、自閉スペクトラム症のある人が日々の生活で直面する困難を軽減し、より適応的な行動を身につけることを目指します。

薬物療法

自閉スペクトラム症(ASD)の根本的な治療法はないものの、症状によって薬物療法が検討される場合があります。特に、易刺激性や興奮性、多動性、常同行動といった症状に対しては、抗精神病薬が有効とされることがあります。具体的には、易刺激性、多動、常同行動にはアリピプラゾールが、易刺激性、反復行動、引きこもりにはリスペリドンが用いられることがあります。これらの薬は、ASDの中核症状を直接改善するものではなく、併存する精神症状や行動上の問題の緩和を目的としています。

自閉スペクトラム症の予後

自閉スペクトラム症の特性は生涯にわたって継続することが一般的です。特に、学齢期までにどれだけコミュニケーション能力が発達しているかが、その後の生活の質に大きく影響を及ぼします。例えば、知能検査の結果が低い場合や、幼少期に言語能力の獲得が困難であった自閉スペクトラム症のお子様は、成人後もより手厚い支援が必要になるケースが多いです。一方で、早期から適切な支援を受けることで、多くの人が社会生活への適応力を高め、充実した生活を送ることが可能になります。知能のレベルに関わらず、個々の特性に応じた継続的な支援が、自閉スペクトラム症の方々の予後を良好にする上で非常に重要だといえるでしょう。

大人の自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症(ASD)は、一般的に3歳頃までに診断されることが多いです。しかし、特性が本人や周囲にとって気づきにくい場合や、その程度が軽微な場合は、小学校入学後や成人になってから初めて自閉スペクトラム症(ASD)と診断されるケースも少なくありません。また、診断基準をすべて満たさないものの、自閉スペクトラム症(ASD)に特有の症状が見られる、いわゆる「グレーゾーン」に該当する人もいます。成人後に自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる場合は、以下の項目に多く当てはまるか確認してみてください。あいまいな質問に対して明確に答えるのが苦手である、会話中に相手の表情や仕草から意図を読み取ることが難しい、言葉を文字通りに受け取ってしまい、比喩表現や皮肉などが理解できない、他の人が気にならないような特定の素材や音、匂いに対して非常に不快に感じることがある、友人関係の築き方や人付き合いの方法がよくわからない、自分の決めたやり方やルーティンが崩れると強い不安や動揺を感じるといった特徴が挙げられます。これらはあくまで一例であり、当てはまる項目の数だけで自閉スペクトラム症(ASD)と断定することはできません。しかし、これらの特性によって日常生活や社会生活で困難を感じている場合は、医療機関の受診や専門家への相談を検討することをおすすめします。

大人の自閉スペクトラム症とは?

大人の自閉スペクトラム症(ASD)とは、生まれつきの脳機能の偏りにより、社会生活に困難を抱える発達障害の一つである自閉スペクトラムのことです。この特性は幼少期から認められますが、周囲の理解や本人の努力によって社会に適応し、大人になって初めて、人間関係や仕事の課題に直面して自身のASDに気づくケースも少なくありません。自閉スペクトラム症の原因はまだ完全に解明されていませんが、脳の機能に障害が起こり、認知や行動に偏りが生じると考えられています。大人の自閉スペクトラム症に対する治療は、薬物療法と行動療法を組み合わせることが有効であるとされています。

大人の自閉スペクトラム症の特徴

大人のASD(自閉スペクトラム症)には3つの特徴が見られます。まず、対人相互作用の障害では、他者とのコミュニケーションにおいて、アイコンタクトの欠如や表情から感情を読み取ることが難しいといった特徴があります。次に、対人コミュニケーションの障害では、言葉を文字通りに受け取ってしまい、相手の意図を理解しにくいことや、会話のキャッチボールが苦手といった特性が挙げられます。最後に、行動・関心・活動の限局的、反復パターンでは、特定の物事への強いこだわりや、繰り返しの行動が見られる場合があります。これらの特徴は、大人になってから社会生活の中で生きづらさとして認識されることがあります。

対人相互作用の障害

自閉スペクトラム症のある人は、他者との情緒的な相互作用において、さまざまな特徴がみられます。アイコンタクトが少ない、表情やジェスチャーの意味を理解しにくい、相手の気持ちを推し量ることが難しいといった違いが見られます。これらは、社会的な状況を適切に解釈し、円滑な人間関係を築く上で困難となる意味を持ちます。また、曖昧な指示や複雑な手順を理解するのが苦手で、仕事や集団活動でミスをすることがあるのも特徴の一つです。

対人コミュニケーションの障害

対人コミュニケーションの障害では、言葉のやり取りに困難が生じることが特徴です。具体的には、言葉の裏にある皮肉や比喩、冗談などのニュアンスを理解するのが苦手な傾向があります。また、会話の流れを掴むのが難しく、自分が話す番なのか聞く番なのかが分からなくなることもあります。そのため、雑談やおしゃべりのような社会的なコミュニケーションにおいて、他の人とスムーズなやり取りをすることに課題を感じることが多いです。

行動・関心・活動の限局的、反復パターン

自閉スペクトラム症のある人は、限られた対象に対して強いこだわりを持つ点が特徴です。例えば、物の全体像よりも細部に注目したり、特定の事柄への知識は豊富である一方、それ以外には関心を示さなかったりすることがあります。また、物事が思い通りに進まないと動揺しやすく、急な予定変更に対応できないといった特徴も挙げられます。感覚の過敏さや鈍麻さもこの特性の一環として現れることがあり、大きな音や特定の感触に対して非常に不快に感じたり、反対に痛みを感じにくかったりする場合もあります。

大人の自閉スペクトラム症の対処・治療法

大人になってからASDの特性に気づく場合でも、適切な対処法や治療法を知ることで、生活の困難を軽減できます。大人の自閉スペクトラム症は、自身の特性を理解し、周囲に配慮を求める環境調整が重要です。具体的には、コミュニケーションの取り方や感覚過敏への対策など、個人の特性に応じた工夫が求められます。

また、心理社会的治療やカウンセリングも有効な手段です。ストレスマネジメントや社会スキルのトレーニングを通じて、日常生活での適応力を高められます。これらの対処法で改善が見られない場合、医師の判断で薬物療法が検討されることもあります。薬物療法は、併存する精神症状(不安、抑うつなど)の緩和を目的として使用されることがあります。

療育における作業療法士の役割

療育では、医師、保育士、言語聴覚士、理学療法士といった多様な専門職が連携していますが、作業療法士は特に、作業活動を通じて心身の健康を促進し、日常生活動作の獲得を支援する役割を担っています。作業活動とは、食事、トイレ、着替えなどの基本的な動作に加え、遊びや学習、社会参加など、人間が行うすべての活動を指します。

発達障害のある子どもたちの療育において、作業療法士は日常生活の応用動作能力の向上、感覚面のサポート、社会性の発達を促すなど多岐にわたる支援を提供します。例えば、積み木やお絵描き、工作などの遊びを通して、人との関わり方や感覚の調整をサポートします。粘土遊びや砂場遊び、ボールプールなどを用いた感覚統合療法では、子どもたちが過敏または鈍麻な感覚を刺激し、統合する手助けをします。

さらに、作業療法士は子どもの発達段階や日常生活の能力を評価し、個別化された治療計画を作成・実施します。これには、運動技能の訓練や感覚統合のトレーニングが含まれます。学習環境の調整や適切な学習支援具の選定、使用方法の指導も行い、家族への支援やアドバイスの提供も大切な役割です。

まとめ~自閉スペクトラム症(ASD)とは?~

自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつきの脳機能に関連する特性によって、対人関係や社会的コミュニケーションの困難、こだわり行動などが現れる発達障害の一つです。幼少期からその特性が現れ始めることが多く、2歳頃までに診断されるケースも多く見られますが、症状の現れ方や程度には個人差があるため、就学期以降や成人期になってから診断されることもあります。日本における自閉スペクトラム症の診断年齢は、平均7.3歳、最頻値3.0歳、中央値6.0歳というデータがあります。そのため、明確な診断基準があるわけではないため、専門家による判断が不可欠です。例えば、言語発達の遅れや特定の遊びへの強いこだわり、感覚過敏などの特徴は、年齢によって現れ方が異なります。

もし、今回ご紹介したチェック項目に複数当てはまる場合や、当てはまる症状が少ないものの気になる点がある場合は、専門機関への相談を検討しましょう。お子さんの場合は自治体の発達窓口や小児科へ、大人の場合は精神科や心療内科への受診が推奨されます。

なお、作業療法士は作業活動を通じて心身のリハビリテーションを行う専門職であり、自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとする発達障害領域でも重要な役割を担っています。作業活動を通じて、子どもたちの発達を促し、一人ひとりがその人らしく社会生活を送るための支援を行います。子どもたちの可能性を引き出し、自立した生活を支える仕事に興味がある方は、作業療法士という職業もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。無料パンフレットの請求やオープンキャンパスへの参加を通じて、具体的な仕事内容や魅力を知る機会を設けてみてください。

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