学校などの教育現場において、いじめや不登校、暴力行為など児童・生徒を取り巻く問題はさまざま。
その要因や背景は多様化・複雑化しているため、教員だけの支援では解決が困難となっているのが現状です。
そこでこの記事では、こういった問題の解決を図る専門職として現在配置が進められているスクールソーシャルワーカーという専門職について紹介します。
「不登校の子どもたちを助けたい」「困っている子どもたちの力になりたい」という人はぜひ、その仕事内容や目指し方を知って、職業選択の候補の一つとして検討してみてください。
目次
スクールソーシャルワーカー(SSW)とは
スクールソーシャルワーカー(school social worker:SSW)とは、学校などの教育現場において児童・生徒が生活の中で抱えているさまざまな問題の解決を図る専門職です。
具体的には、いじめや不登校、暴力行為や虐待などの問題を解決するために、生徒を取り巻く環境に働きかけたり、関係機関などと連携した支援および調整をおこなったりします。
ソーシャルワーカーは働く場所で呼び方が変わる
福祉や介護、医療、教育などの業界で相談員として働く人のことをまとめてソーシャルワーカーといいます。
ソーシャルワーカーは、小学校や中学校、高校などの教育機関で働く場合はスクールソーシャルワーカー、介護施設で働く場合は生活相談員、病院で働く場合は医療ソーシャルワーカーなど、働く職場や支援対象に応じて呼び名が変わるのが特徴です。
スクールカウンセラーとの違い
スクールソーシャルワーカーと混同されがちな職業としては、スクールカウンセラーがあります。
スクールカウンセラーとは、学校などの教育現場で児童・生徒や教職員の心のケアをおこなう職業です。
両者はどちらも学校などの教育現場において児童・生徒や保護者、教職員を支援する仕事ですが、問題解決に向けてのアプローチ方法に違いがあります。
スクールカウンセラーは、心理の専門家として児童・生徒の行動観察やカウンセリングなど心理面のサポートをおこなうのが仕事です。
それに対してソーシャルワーカーは、社会福祉の専門家として、環境調整や制度の活用などの福祉の面から児童・生徒を支援する特徴があります。
スクールソーシャルワーカー導入の背景
「学生時代、そんな人学校にいたかな…?」と、スクールソーシャルワーカーという言葉にあまりなじみがない人もなかにはいるかもしれませんね。
スクールソーシャルワーカーの普及は、文部科学省が2008年に導入した「スクールソーシャルワーク活用事業」がきっかけです。
本事業では、いじめや不登校、暴力行為や児童虐待など、年々増え続けている児童・生徒を取り巻く問題を解決するにはコーディネーター的な存在が必要であると説明。
さらにこういった問題の背景には、学校だけでなく家庭や地域などさまざまな原因が複雑に絡み合っていることを指摘し、学内外の環境に総合的に働きかけることができる人材として、スクールソーシャルワーカーの配置を推進しています。
スクールソーシャルワーカーの仕事内容
文部科学省が発表した「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、小・中学校の不登校児童生徒数は24万4,940人(前年度19万6,127人)と過去最多。さらに9年連続で増加の一途をたどっています。
こういったいじめ・不登校を始めとし、暴力行為や虐待、貧困など生徒・児童を取り巻くさまざまな問題の解決を図るのがスクールソーシャルワーカーの仕事です。
スクールソーシャルワーカーの業務内容は大きく分けて 直接的支援と間接的支援の2つに分けられます。
直接的支援では、家庭訪問や児童・生徒の家庭を必要な福祉サービスや関係機関につなぐなどの援助がメイン。
そして間接的支援としては、不登校の生徒でも通学しやすいよう支援学級を準備するなどの環境調整や、 関係機関との連携や調整、学校内におけるチーム体制の構築などがあげられます。
また、スクールソーシャルワーカーの支援対象には、児童・生徒だけでなく、保護者や学校の教職員も含まれます。
このため保護者や教職員に対する相談援助や情報提供、教職員への研修活動なども、スクールソーシャルワーカーの仕事です。
スクールソーシャルワーカーが活躍している場所
スクールソーシャルワーカーは主に、全国の公立小・中学校、高校や特別支援学校、教育委員会や教育事務所などで活躍しています。
文部科学省の令和5年4月に発表した「スクールソーシャルワーカー活用事業に関するQ&A」によると、2020年度には全国に2,859人のスクールソーシャルワーカーが配置されており、対応学校数は1万8,286校とのことです。
この数字からわかるとおり、スクールソーシャルワーカーはすべての学校に必ず配置されているわけではありません。
また、配置の形態は自治体によって異なり、1つの学校に専属でスクールソーシャルワーカーが配置される場合もあれば、複数の学校を掛け持ちしている場合もあります。
現在は教育委員会などから派遣され、非常勤として地域の学校を巡回する働き方が多いようです。
スクールソーシャルワーカーになるには
スクールソーシャルワーカーという資格試験はありませんが、職場では社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士、公認心理士のいずれかの資格を求められることがほとんどです。
社会福祉士または精神保健福祉士の資格を保有している場合、日本ソーシャルワーク教育学校連盟が認定するスクールソーシャルワーク教育課程の教育課程を修了する必要があります。
そして臨床心理士や公認心理師の資格を保有している場合は、指定された保健福祉系の大学院への進学・卒業が必要です。
どちらも最終的には就職先がおこなう試験・面接をうけ、合格することで初めてソーシャルワーカーとして働くことができます。
スクールソーシャルワーカーが目指せる資格
ここからは、社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士、公認心理士などソーシャルワーカーが目指せる資格の特徴やその取得方法についてそれぞれ詳しく説明します。
社会福祉士
社会福祉士とは、福祉・医療の相談援助に必要な専門知識やスキルがあることを証明する国家資格です。
社会福祉制度の専門家として、高齢者や障がい者、子どもなど、社会的に弱い立場にある人の相談に乗り、必要な支援やサービスにつなげます。
社会福祉士の資格を取得するには、主に以下いずれかの受験資格を満たしたうえで、年に1回実施される社会福祉士国家試験に合格する必要があります。
<指定科目履修ルート>
- 4年制の福祉系大学で指定科目を履修、卒業
- 短大など3年制の福祉系の学校で指定科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を1年以上積む
- 短大など2年制の福祉系の学校で指定科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を2年以上積む
<基礎科目+短期養成施設ルート>
- 4年制の福祉系大学で基礎科目を履修・卒業後、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶ
- 短大など3年制の福祉系の学校で基礎科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を1年以上積み、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶ
- 短大など2年制の福祉系の学校で基礎科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を2年以上積み、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶ
<一般大学+一般養成施設ルート>
- 4年制の大学を卒業後、一般養成施設で1年以上学ぶ
- 短大など3年制の学校を卒業後、相談援助業務の実務経験を1年以上積み、一般養成施設で1年以上学ぶ
- 短大など2年制の学校を卒業後、相談援助業務の実務経験を2年以上積み、一般養成施設で1年以上学ぶ
- 相談援助業務の実務経験を4年以上積み、一般養成施設で1年以上学ぶ
精神保健福祉士
社会福祉士とは、精神障がいやこころの病気を抱えた人の福祉に関する専門知識や技術があることを証明する国家資格です。
精神障がい者の福祉や保健分野に特化した専門家として、精神障がいやこころの病気を抱えた人が社会生活を送れるよう、相談・助言や自立を図る訓練などをおこないます。
精神保健福祉士の資格を取得するには、主に以下いずれかの受験資格を満たしたうえで、年に1回実施される精神保健福祉士国家試験に合格する必要があります。
<指定科目履修ルート>
- 4年制の福祉系大学で指定科目を履修、卒業
- 短大など3年制の福祉系の学校で指定科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を1年以上積む
- 短大など2年制の福祉系の学校で指定科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を2年以上積む
<基礎科目+養成施設ルート>
- 4年制の福祉系大学で基礎科目を履修・卒業後、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶ
- 短大など3年制の福祉系の学校で基礎科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を1年以上積み、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶ
- 短大など2年制の福祉系の学校で基礎科目を履修・卒業後、相談援助業務の実務経験を2年以上積み、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶ
<一般大学+一般養成施設ルート>
- 4年制の大学を卒業後、一般養成施設で1年以上学ぶ
- 短大など3年制の学校を卒業後、相談援助業務の実務経験を1年以上積み、一般養成施設で1年以上学ぶ
- 短大など2年制の学校を卒業後、相談援助業務の実務経験を2年以上積み、一般養成施設で1年以上学ぶ
- 相談援助業務の実務経験を4年以上積み、一般養成施設で1年以上学ぶ
臨床心理士
臨床心理士とは、日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格です。
社会福祉士や精神保健福祉士、公認心理師のような国家資格ではありませんが、数ある心理系資格のなかでも歴史が長く、取得者数も多いメジャー資格となっています。
臨床心理士の仕事は、臨床心理学に基づく専門知識や技術を持つこころの専門家として、クライアントの心理的な問題解決を図ることです。
臨床心理士の資格を取得するには、主に以下いずれかの受験資格を満たしたうえで、日本臨床心理士資格認定協会が開催している資格試験に合格する必要があります。
- 臨床心理士養成に関する指定大学院(1種・2種)を修了
- 臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了
- 外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後日本で2年以上の心理臨床経験がある
- 医師免許取得者で、取得後、2年以上の心理臨床経験がある
公認心理師
公認心理師とは、保健医療や福祉、教育などの分野において、心理学に関する専門的知識および技術があることを証明する国家資格です。
心理的に問題を抱えた相談者に対して、心理学の専門知識に基づいた助言や指導、援助をおこないます。
公認心理師の資格を取得するには、主に以下いずれかの受験資格を満たしたうえで、年に1回実施される公認心理師国家試験に合格する必要があります。
- 4年制大学で指定科目を履修し、なおかつ大学院でも指定科目を履修
- 4年制大学で指定科目を履修、卒業後厚生労働省・文部科学省指定の施設で2年以上の実務経験を積む
スクールソーシャルワーカーを目指すなら社会福祉士がおすすめ
文部科学省の「スクールソーシャルワーカー活用事業に関するQ&A」によると、令和3年時点で、スクールソーシャルワーカーの63.9%が社会福祉士の資格を保有していることがわかっています。
次点で多いのが精神保健福祉士で33.9%、その次は教員免許で32.3%、その次は臨床心理士や公認心理師など心理系の資格が20%と続いています。
このためもし「スクールソーシャルワーカーになるためにどの資格を取得するか迷っている」という場合は、もっともメジャーな社会福祉士の資格取得を目指すのがおすすめです。
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夜間1年でスクールソーシャルワーカーはもちろん、その他医療や福祉の現場でソーシャルワーカーとして幅広く活躍できる社会福祉士の資格取得が目指せます。
授業時間は基本的に18時10分〜21時20分のため、仕事などで忙しい方でも無理せず通学が可能です。
まとめ
スクールソーシャルワーカーは、文部科学省によって2008年に導入が進んだ学校などの教育現場における専門職です。
全国の公立小・中学校、高校や特別支援学校などで、いじめや不登校、暴力行為など児童・生徒が生活の中で抱えているさまざまな問題の解決を図ります。
スクールソーシャルワーカーとなるのに絶対に必要な資格はありませんが、職場では社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理師や公認心理師などの資格を求められる場合がほとんどです。
現在活躍しているスクールソーシャルワーカーは、その半数以上が社会福祉士の資格を保有しています。
このため、これからスクールソーシャルワーカーを目指すならもっともメジャーな資格である社会福祉士の資格取得がおすすめです。
社会福祉士とは、社会福祉制度の専門家として、福祉・医療の相談や支援に必要な専門知識と技術があることを証明する国家資格です。
学校以外にも、介護施設では生活相談員、医療機関では医療ソーシャルワーカーなど、さまざまな現場でソーシャルワーカー(相談員)として活躍できます。
神戸医療福祉専門学校 中央校 社会福祉士科は、夜間1年で即戦力となる社会福祉士が目指せる専門学校です。
同じくスクールソーシャルワーカーが目指せる福祉系資格である精神保健福祉士科も併設しているため、気になる人はぜひ無料のパンフレットやオープンキャンパスでその違いをチェックしてみてください。
監修・運営者情報
監修・運営者 | <神戸医療福祉専門学校 中央校> 鍼灸・介護・精神 |
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