テレビや新聞、SMSなどを通じて発達障害への認知・理解が広がりつつある近年。
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)は、そんな発達障害の一つです。
しかし、言葉自体は聞いたことがあっても「その症状や診断基準はよく知らない」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、自閉スペクトラム症(ASD)とは?について、症状や原因、診断基準などを解説します。
目次
自閉スペクトラム症(ASD)とは?
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)とは、さまざまな特性がみられる発達障害の一つです。
具体的には、社会的なコミュニケーションの困難さや特定のものや行動へのこだわり、感覚過敏などの特性がみられます。
従来は、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などさまざまな名称で呼ばれていましたが、2013年に米国精神医学会(APA)が診断基準である「DSM-5」を発表して以降、自閉スペクトラム症(ASD)とまとめて表現されるようになりました。
自閉スペクトラム症(ASD)の症状
自閉スペクトラム症(ASD)の特性は、人や発達段階に応じて現れ方が異なります。
主な症状は以下のとおりです。
- 言葉の遅れ
- コミュニケーションの困難
- 行動や興味の偏り
- 特定のもの・行動に対する強いこだわり
- 変化に対する不安や抵抗
- 感覚の過敏さ、鈍さ
自閉スペクトラム症(ASD)の方のうち、約半数は知的障害をともなうとされています。
従来、知的障害を伴わない自閉スペクトラム症(ASD)は、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などと診断されていました。
しかし、現代では知的障害の有無に関わらず共通する症状があるとして、自閉スペクトラム症(ASD)という診断名に統一されています。
自閉スペクトラム症(ASD)の割合
厚生労働省では、自閉スペクトラム症(ASD)の割合は約100人に1人(1%)としています。
しかし、特性や程度によっては本人も周囲も気づきにくい、診断が付いていない人もいることを想定すると、現実にはもっと多いと考えてよいでしょう。
実際、一般社団法人 日本自閉症協会もおよそ20人〜40人に1人(2.5%〜5%)は自閉スペクトラム症(ASD)の可能性があると報告しています。
男女比では4:1と男性に多くみられ、その発生頻度は女性の約4倍です。
しかし、近年では社会的困難の現れが目立ちにくいという理由から、女性の自閉スペクトラム症(ASD)は見逃されやすい傾向にあることも指摘されています。
自閉スペクトラム症(ASD)の原因
自閉スペクトラム症(ASD)の原因は、まだ正確には解明されていませんが、生まれつきの脳機能障害であるという説が有力です。
脳の中枢神経には、身体から送られてきた情報を受け取り、分析・判断するという役割があります。
この中枢神経系に、伝的要因が複雑に関与して機能不全を起こすことで、得意なことと苦手なことに大きな差が出たり、日常生活でさまざまな困難が生じたりすると考えられています。
後天的なものではないため、親の愛情不足や育て方などが原因ではありません。
自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる子どもの特徴
自閉スペクトラム症(ASD)は、先天的な脳機能障害が原因だと考えられているため、その特性は幼少期から発現している場合が多いです。
自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる子どもには、主に以下のような特徴がみられます。
生後〜1歳
- 抱っこを嫌がる
- あまり泣かない
- あやしても笑わない
- 寝つきが悪い
- 人見知りしない
- 親の後追いをしない
2〜3歳
- 発語が遅い
- 名前を呼んでも反応しない
- 視線が合わない
- 人の言ったことをオウム返しする(反響言語)
- 指差した方向をなかなか見ない
- 抱っこや触られるのを嫌がる
- 人との関わりに関心がない
- 食べ物の好き嫌いが激しい
- 欲しいものを自分の言葉や身ぶりではなく、親の手をつかんで指し示す
4〜6歳
- 同じ遊びを繰り返す
- ごっこ遊びが苦手
- 集団行動が苦手
- 特定のものごとやルールに強いこだわりがある
- 同年齢の友達をうまく遊ぶことができない
- 痛みや音、光などの感覚に無関心、あるいは過度に反応する
特性の現れ方や程度の強さは子どもによって違いがあります。
そのためこれらはほんの一例に過ぎず、どれか1つでも当てはまったら自閉スペクトラム症(ASD)というわけではありません。
複数個当てはまる、あるいは当てはまる症状は少なくても程度が強いなど、気になる行動がある場合は、一度医師や自治体の発達窓口などに相談してみるとよいでしょう。
自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準
米国精神医学会(APA)が発表した「DSM-5」における自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準は以下のとおりです。
- 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
- 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さなど)
- 発達早期から1,2の症状が存在していること
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
- これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと
出典:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省)
小児神経科・児童精神科・小児科医師による医学的評価で上記の条件が満たされたとき、自閉スペクトラム症(ASD)と診断されます。
自閉スペクトラム症(ASD)の併存症
自閉スペクトラム症(ASD)の人は約70%以上の人が1つ、40%以上の人が2つ以上の精神疾患を併存しているといわれています。
自閉スペクトラム症(ASD)の併存症として多いのは知的障害(50%)であり、そのほかにもADHD(注意欠如・多動症)、発達性協調運動症(DCD)、不安症、抑うつ障害、学習障害などがしばしは併存します。
このように自閉スペクトラム症(ASD)は、主症状である1,2以外にもさまざまな併存症がみられるため、小児神経科・児童精神科・小児科医師などの専門家によって医学的評価を受けることが重要です。
自閉スペクトラム症(ASD)の診断時期
自閉スペクトラム症の症状は幼少時から認められ、1歳半検診や3歳検診などを通して、3歳までに診断されることが多いです。
ただし、知的障害や言葉の遅れをともなわないなど本人も周囲も気づきにくい特性の場合、小学校入学後や成人してから初めて診断されることもあります。
自閉スペクトラム症(ASD)の治療方法
自閉スペクトラム症(ASD)は生まれつきの脳機能障害が原因であると考えられているため、現代医学では特性自体の治療は困難です。
そのため自閉スペクトラム症(ASD)の治療は、本人も周囲も生きやすくなるよう支援する治療教育=療育が基本となります。
療育では、一人ひとりの特性に合わせた教育的方法を用いることで、障害による生きづらさを感じにくくし、社会生活に適応できるよう支援します。
療育は、子育て・発達支援室や療育センター、児童相談所などの公的な機関や医療機関で受けることが可能です。
また、興奮やパニック、自傷行為、不眠などがある場合には、抗精神病薬や睡眠薬など、症状に応じて薬物が処方されることもあります。
障害福祉の現場における介護の仕事とは?
介護というと高齢者介護のイメージが強いですが、実は介護士は障害者福祉の現場でも活躍しています。
実際に、介護業界で唯一の国家資格である介護福祉士の国家試験でも、発達障害についての理解を問う問題として、過去に自閉スペクトラム障害の特性に関する設問が出題されています。
自宅から通う通所系、入所して暮らす施設系、利用者宅を訪問する訪問系などさまざまな障害者支援施設で利用者の介護や日常生活のサポートをおこなうのが、障害福祉の現場で働く介護士の仕事です。
身体的・精神的など抱えている障害は人によってさまざまですが、そのなかでも自閉症をはじめとする発達障害の利用者さんは、特性と個性の見分け方が難しいという特徴があります。
障害による特性はすべての人に当てはまるわけではないため、「自閉スペクトラム症の患者さんだからこう対応すればいい」という正解はありません。
このため障害福祉の現場で働く介護士には、より一人ひとりに合わせた対応が求められます。
しかし、そのぶんハンデがある人が自立していく手助けができるやりがいのある仕事だといえるでしょう。
まとめ
自閉スペクトラム症(ASD)とは、社会的なコミュニケーションの困難さや特定のもの・行動への強いこだわり、感覚過敏などの特性が見られる発達障害です。
生まれつきの障害であるため根本的な治療は困難ですが、一人ひとりの特性に合わせた療育により、本人が感じる生きづらさを減らすことができます。
このように発達障害を抱える本人とその家族をサポートするには、医療、福祉、教育など地域全体での支援が必要です。
介護福祉士は、そんな発達障害を抱える人の日常生活をサポートする職業の一つです。
介護というと高齢者介護現場のイメージが強いかもしれませんが、身体的・精神的にさまざまな障害を抱えた人の生活介護や自立訓練、就労支援以降支援などに携わっています。
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