
変形性膝関節症を改善する代表的なリハビリテーションとしては、運動療法が挙げられます。
しかし、よかれと思って運動を始めてもその方法が不適切だと、膝関節に負担がかかって逆効果となるため注意が必要です。
そこでこの記事では、変形性膝関節症の人がしてはいけない運動を解説。さらに、変形性膝関節症の人におすすめの運動や、症状改善のためにできることなどを紹介します。
目次
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは、膝関節のクッションである軟骨がすり減って変形し、痛みが生じる病気です。
厚生労働省が平成20年に発表した「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について」という報告書によると、日本国内における変形性膝関節症の患者数は、自覚症状がある方が約1,000万人います。潜在的な患者を含めると約3,000万人にのぼると推定されています。
変形性膝関節症は高齢者になるほど罹患率が高く、男女比が1:4と女性の割合が高いのも特徴です。特に40代〜50代の女性の発症が目立ちます。
症状
変形性膝関節症の主な症状は、膝の痛みや可動域の制限、変形などです。
初期症状では、立ち上がりや歩き始めなど一部の動作でこわばりや違和感、痛みを感じますが、少し休めばおさまる場合がほとんどです。中期になると、正座や階段の上り下りで痛みを感じるようになります。末期になると歩く、座るなどの基本的な動作に困難が生じるほか、膝を伸ばせないなど膝関節の変形が目立つようになります。脚が外側にカーブし、膝から下が内側に曲がったいわゆるO脚(内反膝)になっていく方がほとんどです。
中期以降になると、膝の軟骨組織がすり減ってその欠片が膝関節を包んでいる滑膜を刺激し、膝に水が溜まる症状も現れます。
原因
変形性膝関節症の主な原因は加齢です。
加齢によって膝軟骨の水分量や弾力性、筋肉量が低下して軟骨が擦り減り、徐々に痛みが出始めます。
また、肥満や遺伝子なども関係していると考えられるほか、骨折や半月板損傷などの外傷や、化膿性関節炎など感染の後遺症としても発症することがあります。
検査と診断
変形性膝関節症の鑑別には、診察とレントゲン検査が行われることが一般的です。
他の疾患と区別するためにMRI検査や血液検査が行われることもあります。
「いつ頃・膝のどの場所が・どのように痛むか」など痛みの出方やスポーツ歴などを問診するほか、触診やレントゲン検査で膝関節の腫れや変形をチェックします。
治療法
変形性膝関節症の治療は、薬物療法やリハビリテーションなどの保存療法からはじまり、十分な効果が得られない場合には骨切り術や人工関節置換術などの手術が検討されます。
薬物療法では、鎮痛効果や抗炎症作用のある内服薬や、湿布・軟膏などの外用薬の使用が一般的です。
リハビリテーションでは、変形や症状の進行を遅らせるために、主に電気や超音波などを用いる物理療法や適度な運動で膝関節にかかる負担の減少や安定を図る運動療法などが用いられます。


運動機能の改善を図る「理学療法士」とは?
上記で紹介した物理療法、運動療法などを用いて変形性膝関節症のリハビリテーションを行うのが理学療法士という職業です。
変形性膝関節症以外にも、さまざまな病気や怪我、障害などにより身体がうまく動かせなくなった人に対して、座る・立つ・歩くなどの基本動作の回復や、障害の悪化予防を目的としたリハビリテーションを実施します。
自分の身体を自分で動かせることは、健康で自立した生活に欠かせない重要な要素です。
そのように一人ひとりがその人らしく、笑顔で生活できるよう、身体面からサポートすることが理学療法の仕事です。
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変形性膝関節症の人が「してはいけない運動」
変形性膝関節症の予防や治療では、適度な全身運動で膝の機能を保ち、バランスのとれたからだづくりをすることが重要です。
しかし、変形性膝関節症の人が以下のような運動をすると、症状や痛みが悪化する可能性があります。
- 膝への負担が大きい運動
- 長時間膝に負担がかかる運動
- 激しい運動やスポーツ
膝への負担が大きい運動
膝への負担が大きい運動は、変形性膝関節症の症状や痛みを悪化させる可能性があるため控えましょう。例えば、ジャンプは、着地時に膝の骨が強く圧迫されるため、軟骨内の水分が押し出され、弾力性の低下を招きます。
また、スクワットや階段の上り下り、高負荷のウエイトトレーニングなども膝関節に負荷がかかる運動です。
長時間膝に負担がかかる運動
長距離のランニングなど膝に繰り返し衝撃を与える運動も、変形性膝関節症を悪化させる可能性があります。瞬間的な負荷はジャンプやスクワットなどより小さくても、継続的に膝に負荷がかかりダメージが蓄積するためです。
同様の理由から、立ち仕事やウォーキングなど、継続的に膝に負担がかかる運動も長時間は避けるべきといえるでしょう。
激しい運動やスポーツ
急に動いたり、止まったりする動作があるスポーツも、膝関節に大きな負担がかかるため避けるべきです。
具体的には、野球やサッカー、テニス、スキーなどが挙げられます。


変形性膝関節症の人が「したほうがいい運動」
変形性膝関節症の人は、膝に負担をかけすぎる運動は避けるべきです。しかし、かといってまったく運動せずに安静にしていた方がよいのかといえばそんなことはありません。
膝関節を支える筋力が低下すると、膝の周囲が不安定になり、さらに膝関節の負担が集中してしまうためです。
変形性膝関節症の人におすすめな運動は以下のとおりです。
- 軽い有酸素運動やストレッチ
- 大腿四頭筋の筋力トレーニング
軽い有酸素運動やストレッチ
変形性膝関節症の人におすすめの運動としては、膝への負担が少ないウォーキングやヨガ、水中運動、自転車運動などの軽い有酸素運動やストレッチが挙げられます。
こういったトレーニングで脚の筋肉を鍛えれば、脚を支える力が向上して膝関節の負担の減少が期待できます。
ただし、トレーニングの量によっては痛みが出る可能性もあるため、無理のない範囲で行うことが大切です。
大腿四頭筋の筋力トレーニング
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とは、太ももの前側にある4つの筋肉の総称です。
膝関節の周囲にある大きな筋肉のため、ここを鍛えることで膝関節を安定させ、膝への負担を減らすことができます。
自宅で簡単に実践できる大腿四頭筋を鍛えるトレーニング方法としては、主に以下が挙げられます。
- 仰向けになり、片足を30度くらい上げて10秒静止する
- 椅子に座ったまま片足を伸ばして10秒静止する
上記のような運動を両足20〜30回、1日2〜3セット行うことで、大腿四頭筋の筋力アップが期待できます。痛みがある場合は無理をせず、体調に合わせて回数を調整しましょう。
その他変形性膝関節症の人がしてはいけないこと
運動以外にも、変形性膝関節症の人が日常生活で気をつけるべき点は以下のとおりです。
- 和式の生活スタイル
- 重いものの上げ下げ
- 身体の冷え
和式の生活スタイル
いわゆる和の生活スタイルは、洋式に比べて膝への負担が大きいです。
膝関節の屈曲角度が大きくなる正座や、深くしゃがみ込む動作をともなう和式トイレなど、大きく曲げる必要のある動作は膝に大きな負担をかけます。
床に正座やあぐらをかいて座るのではなく、椅子やソファに座るようにする、洋式トイレを使用するなど、和式から洋式の生活スタイルへと見直しましょう。
重い物の上げ下げ
重い物を持つと膝にかかる負担は大きくなります。
特に重い物を持ち上げる、床に置くなどの上げ下げの動作は膝への負担が大きいため、重い荷物の移動や積み下ろしは極力避けるようにしましょう。
身体の冷え
体が冷えて血管が収縮し血行が悪くなると、膝周辺部分に必要な栄養素が届かなくなる、筋肉が硬直して膝の筋肉や関節機能がスムーズに働かなくなるなどの理由から痛みを感じやすくなります。
寒い季節になると関節痛を引き起こしやすくなるのはこのためです。
あたたかい服装をする、身体を温める食事をとるなどして身体が冷えないよう心がけましょう。


変形性膝関節症を改善するためにできること
適度な運動だけでなく、日常生活でも以下の点を意識することで変形性膝関節症の改善がめざせます。
- ダイエットする
- 正しい歩き方を心がける
ダイエットする
体重は重ければ重いほど膝にかかる負担も大きいため、肥満は変形性膝関節症を引き起こす代表的な危険因子だと考えられています。
実際にBMIの高い人は変形性膝関節症の割合が高いというデータもあるため、肥満体型の人はダイエットして体重を落としましょう。
変形性膝関節症に適した運動法で同時に膝周辺部位の筋肉も鍛えれば、症状や痛みの改善に高い効果が期待できます。
正しい歩き方を心がける
正しい歩き方を身につけることで、膝への負担は軽減されます。
まず、まっすぐ顔は前を見て背筋を伸ばし、前に出す足はきちんと膝を伸ばしましょう。歩幅は身長-100cm程度が目安です。
着地するときはかかと→親指の付け根に体重移動し、次に一歩踏みだすときはつま先で地面を蹴ります。
ウォーキングの際もこのように正しい歩き方を心がけることでより高い効果が期待できます。
まとめ
変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨が加齢などによってすり減って変形し、痛みが生じる病気です。
変形性膝関節症の人はジャンプやスクワット、長距離のランニングなど膝に大きな負担がかかる運動は、症状や痛みを悪化させる可能性があるため避けましょう。しかし、かといって運動不足もさらに膝関節の負担が集中してしまう原因となるため、ウォーキングやヨガなど、膝への負担がかからない軽い有酸素運動を行うことがおすすめです。また、太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋のトレーニングも膝への負担に役立ちます。
こういった運動療法や、電気や超音波などの物理療法を用いて、変形性膝関節症の患者さんのリハビリテーションを担当することが理学療法士の仕事です。
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