
柔道整復士と理学療法士は、ともに投薬や手術を行わずに身体機能の治療・改善を目指すという点で共通する職業です。
しかし、医療における役割や仕事内容、活躍する場所などにはさまざまな違いがあります。
そこで今回は、柔道整復師と理学療法士について資格、仕事内容、勤務先、給料、適性の5つの観点から比較し、両者の違いを解説します。
目次
柔道整復師と理学療法士の違い
柔道整復師は、主に骨折や捻挫などの外傷を治療する職業です。主に捻挫や打撲、挫傷などの応急処置や骨折、脱臼などの治療を行います。
それに対して、身体機能や運動能力のリハビリテーションを行うことが理学療法士の仕事です。障害や病気・怪我などで思うように身体が動かせなくなった人に対して、「立つ」「座る」「起き上がる」など身体の基本的な動作に関わるリハビリを行います。
それぞれの職種の主な特徴は以下のとおりです。
柔道整復師とは
柔道整復師とは、ケガの応急処置から治療、リハビリまで行うケガの専門家です。スポーツや日常生活で生じた骨折や捻挫、打撲などの外傷の治療や応急処置を担います。
柔道整復師の治療は、手術などの外科的な処置ではなく、手技でさまざまな刺激を与える柔道整復術を用いることが特徴です。
柔道整復師になるには、柔道整復師の国家資格を取得する必要があり、有資格者の多くは整骨院や接骨院で働いています。
理学療法士とは
理学療法士とは、「立つ」「座る」「起き上がる」など身体の基本的な動作や運動機能のリハビリテーションに関する専門家です。
障害や病気・怪我の後遺症などで思うように身体が動かせなくなった人に対して、マッサージや電気刺激、温熱などの物理的手段を加える理学療法を用いて、日常生活で基本となる動作の改善を目指します。
理学療法士になるには、理学療法士の国家資格を取得する必要があり、有資格者の多くは病院やリハビリテーションセンターで働いています。
>>リハビリテーション(理学療法)とは?理学療法士の役割とは
ここからは、柔道整復師と理学療法士の違いについて、以下の項目ごとにさらに詳しく解説していきます。
- 資格
- 仕事内容
- 活躍している場所
- 給料
- 適性


柔道整復師と理学療法士の違い①資格
柔道整復師と理学療法士はどちらも医療・リハビリテーションに関する国家資格です。
目指す資格の種類は柔道整復師、理学療法士とそれぞれ異なりますが、取得方法はおおむね共通しています。
どちらもそれぞれの養成施設と認定されている大学や短大、専門学校で3年以上学び、所定のカリキュラムを修了することで国家試験の受験資格を取得できます。その後、それぞれの国家試験に合格することで厚生労働大臣から免許が受けられます。
受験者数と合格率
柔道整復師国家試験、理学療法士国家試験それぞれの直近5年間の受験者数と合格率は以下のとおりです。
2023年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 直近5年間の平均 | ||
柔道整復師 | 受験者数 | 5,027人 | 4,521人 | 4,359人 | 4,561人 | 5,270人 | 4,748人 |
合格率 | 66.4% | 49.6% | 62.9% | 66.0% | 64.5% | 61.9% | |
受験者数 | 11,266人 | 11,312人 | 9,434人 | 10,608人 | 10,809人 | 10,685人 | |
理学療法士 | 合格率 | 89.2% | 87.4% | 79.6% | 79.0% | 86.4% | 84.3% |
直近5年間で比較すると、受験者数は柔道整復師が年間4,748人、理学療法士が年間10,685人と理学療法士のほうが多いです。
合格率も、柔道整復師が61.9%、理学療法士が84.3%と理学療法士の方が高くなっています。
ただし、理学療法士の養成施設では、病院やクリニックなどで約2ヵ月の臨床実習を2回受ける必要があります。試験科目やカリキュラムの違いを考えると、一概にどちらの難易度が高いと断定するのは難しいといえるでしょう。
柔道整復師と理学療法士の違い②仕事内容
柔道整復師の主な仕事は、スポーツや日常生活で生じた骨折や捻挫、打撲などの外傷の治療です。
具体的には、患者の患部に触れ、観察して診断を行う「評価」、骨の損傷や脱臼・捻挫時の間節のズレなどを手技で正常な状態に戻す「整復」、治癒の促進、痛みの緩和などを目的として包帯やギプス、テーピングなどで固定する「固定」、治癒後に機能回復を目的としたリハビリを行う「後療法」などがあります。
それに対して、障害や怪我・病気でうまく身体を動かせない人に対して、機能の維持や向上を目的としたリハビリテーションを行うことが理学療法士の仕事です。
手術直後や発症初期となる急性期から、退院後の生活復帰を目指す維持期・生活期まで、症状の経過に合わせて適切なリハビリやサポートを行います。
理学療法士の施術には医師の指示が必要
理学療法士が患者の治療やリハビリにあたるには、医師の指示が必要です。
医師から提供された理学療法の内容をもとに、患者の評価、リハビリのプログラムの策定、運動の指導や物理療法を実施します。
それに対して柔道整復師は、骨折や捻挫、打撲などの応急処置において、医師の指示がなくても治療行為が可能です。


柔道整復師と理学療法士の違い③活躍している場所
柔道整復師は主に、接骨院や整骨院、整形外科などで活躍しています。
また、柔道整復師の資格では独立が認められているため、数年これらの勤務先で経験を積んでから、開業するケースも多いです。
一方、理学療法士は、病院やクリニックなどの医療機関や介護分野、福祉分野で主に活躍しています。
日本理学療法士協会のデータによると、その割合は医療機関が約64%、介護分野が約12%、福祉分野が約1.2%です。
医療機関では主に、病院のリハビリテーション科やリハビリテーションセンター、クリニックの整形外科などに勤務しています。
介護分野では訪問リハビリテーションや老人ホームなどの施設で高齢者を対象としたリハビリテーションがメインとなります。
福祉分野では、主に身体障害者福祉施設や児童福祉施設などで、障がいを抱える人や子どもに対して身体機能の回復や発達支援を目的としたリハビリテーションを行います。
>>理学療法士の主な就職先7選。選び方のポイントもあわせて紹介
スポーツ分野でも活躍が可能!
柔道整復師や理学療法士は、ともに医療分野のイメージが強い職種ですが、近年ではその専門性を活かしてスポーツトレーナーとして活躍する機会も増えてきています。
スポーツトレーナーとは、スポーツチームなどに所属して、スポーツ選手が最高のコンディションでプレイに臨めるよう支援する職業です。
スポーツトレーナーには役割に応じていくつか種類があり、基本的に両者の専門知識はどの分野にも活かせるものです。
しかし、強いて挙げるなら、怪我の応急処置が得意な柔道整復師は特に、スポーツ選手の身体のケアや怪我の手当を主に行うアスレティックトレーナーを目指すのに有利といえます。
一方、怪我予防やリハビリを得意とする理学療法士の資格は、選手が怪我をした際の競技復帰を支援するメディカルトレーナーを目指すのに有利だといえるでしょう。
>>スポーツトレーナーとは? 仕事内容や資格の種類を紹介
>>スポーツトレーナーと理学療法士の違いについて
柔道整復師と理学療法士の違い④給料
厚生労働省の職業情報提供サイトjobtagによると、柔道整復師の平均年収は459万3,000円。
理学療法士の平均年収は432万5,000円です。
一見、柔道整復師の方が給与がやや高い傾向に見えますが、有資格者の平均年齢を見てみると柔道整復師は40歳、理学療法士は35歳となっており、理学療法士の方が若い人がより多く活躍していることがわかります。基本的に年齢があがるほど平均年収は伸びていくことを考えると、双方の給与に資格的な差はあまりなく、地域や雇用形態、勤務先による差が大きいといえるでしょう。


柔道整復師と理学療法士の違い⑤適性
柔道整復師は、自らの手技で骨や関節を正常な状態に戻したり、患部の固定を行ったりするため、より確かな技術力が求められます。
このため手先が器用な人や、怪我に対する応急処置の技術を身に付けたい人に向いているといえるでしょう。
一方、理学療法士は医師や看護師などその他の医療職と連携しながら、患者さんの回復をサポートする仕事です。このため他者とのコミュニケーションが得意な人や、医療分野でもリハビリテーションに特化して学びたいという人により適性があります。
まとめ
柔道整復師と理学療法士はどちらも怪我の治療やリハビリテーションに関わる国家資格ですが、その役割や仕事内容、主な勤務先などさまざまな違いがあります。
職業理解を深め、どちらにより興味があるか、自分に適性があるかを考えて資格取得を検討するとよいでしょう。
神戸医療福祉専門学校 三田校 理学療法士科は、理学療法士が目指せる兵庫県で唯一4年制の専門学校です。
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