
みなさんは、吃音(きつおん)という障害を知っていますか?
吃音とは、発話障害の一つで、最初の音節を繰り返したりして、なめらかに話すことができない状態などを指します。
この記事では、そんな吃音の症状や原因、治療が受けられる場所や、周囲の人の関わり方などについてご紹介していきます。
目次
吃音(きつおん)とは
吃音(きつおん)とは、発話障害の一種で、流暢に話すことができない状態です。
滑らかに発音したり、リズミカルな流れで会話することが難しく、具体的には、話すときに言葉に詰まったり、一部の音を繰り返したり、引き伸ばしたりするなどの症状があげられます。
「どもり」と呼ばれることもあります。この言葉は差別的な意味合いが強いと考える人もいます。
大人も吃音になる
吃音は、一般的に幼児期に発症することが多いとされていますが、大人になってから症状が現れる場合もあります。
成人後に吃音を発症するケースは獲得性吃音と呼ばれ、極度のストレスや脳の損傷などが原因となることがあります。
大人の吃音の症状としては、言葉の繰り返しや引き伸ばし、言葉に詰まるなどの非流暢な話し方が挙げられます。
これらの症状は、仕事や日常生活において困難を感じる要因となることがあります。
吃音の症状の種類
吃音とは、以下の代表的な症状が一つまたは複数現れます。
連発(繰り返し)
伸発(引き伸ばし)
難発(ブロック)
一般的には連発、伸発の段階を経て、難発(ブロック)へと進展することが多いといわれていますが、その発現には個人差があります。
吃音の症状①連発(繰り返し)
吃音の代表的な症状の一つに「連発」があります。
これは、音や語の一部が意図せず繰り返す症状です。
例えば、「わ、わ、わたし」のように語頭の音を繰り返すケースがよく見られます。
その他にも、「たべ、たべ、食べたい」のように、単語の一部を繰り返すこともあります。
この連発は、特に幼児期に多く見られる吃音の症状であり、言葉の発達が著しい頃によく現れます。
就学頃までに自然に症状が見られなくなる傾向がありますが、個人差も大きいです。
吃音の症状は連発の他に、音を引き伸ばす「伸発」や、言葉が出せずに詰まってしまう「難発(ブロック)」などがあり、これらの症状は単独で現れることもあれば、組み合わさって現れることもあります。
吃音の症状②伸発(引き伸ばし)
伸発(引き伸ばし)は、吃音の代表的な症状の一つで、言葉の中の特定の音や母音を、意図せず引き伸ばして発話します。
例えば、「わーーたし」や「こーーんにちは」のように、本来短く発音されるべき音が長く続くことで、会話のリズムが途切れてしまう症状です。
これは、言葉を滑らかに出そうとする際に、発話器官(舌や唇など)に余分な力が入りすぎたり、コントロールがうまくいかなかったりすることで起こると考えられています。
母音や摩擦音(サ行やハ行など)で伸発が見られます。
連発(繰り返し)や難発(ブロック)といった他の吃音症状と併発することも多く、複合的に現れることで、よりコミュニケーションに困難を感じる方もいらっしゃいます。
これらの症状は聴き手にとっては発話がゆっくりに感じられるため、途中で話を遮ってしまったり、続きを促してしまったりすることがありますが、これは吃音のある方にとって心理的な負担となる場合があります。
したがって、吃音のある方との会話では、焦らず、最後まで話を遮らずに聞く姿勢が大切です。
吃音の種類③難発(ブロック)
難発(ブロック)は、言葉を話そうとしても、最初の音がなかなか出ずに言葉に詰まってしまう状態を指します。
例えば、「わ(………)ったし」や「こ(……)んにちは」のように、言葉の出だしで長く間が空いてしまうのが特徴です。
この症状は、発話を開始しようとするときに、声帯や舌、唇などの発話器官が硬直してしまい、発声に必要な空気の流れが一時的に阻害されることで起こると考えられています。
無理に言葉を出そうとすることで、顔をしかめたり、首を振ったり、足を踏み鳴らしたりするなど、発話以外の身体的な動き(随伴運動)が見られることがあります。
これらの動きは、吃音のある方が言葉を出そうと奮闘している表れです。
吃音になる原因は?
吃音の原因はまだはっきりと特定されていませんが、大別すると主に、発達性吃音と獲得性吃音に分かれます。
吃音になる原因①発達性吃音
吃音の大部分を占めるのが発達性吃音であり、その割合は全体の9割以上にもなります。
この吃音は幼児期に発症します。発症率は、子どもの約5〜8%に見られると報告されており、比較的高い割合で発生します。
発達性吃音の約7割から8割の子どもが、特別な治療をせずとも自然に改善する傾向にあります。
症状が続く場合は、自然治癒の可能性が低くなる傾向にあります。
発達性吃音の原因はまだ明確には特定されていません。
一方で、親の育て方や愛情不足が原因ではないことが明らかになっています。
吃音になる原因②獲得性吃音
脳の損傷など神経系に問題や、極度のストレスなどの心理的な理由の吃音を、獲得性吃音といいます。
吃音の診断基準って?
吃音の診断は、ご自身の判断で行うのではなく、専門の機関を受診することが大切です。
医療機関では、精神科や心療内科、耳鼻咽喉科などで診断を受けることが可能です。
ただし、吃音に詳しい医師がいるか事前に確認すると良いでしょう。
診断にあたっては、国際的な診断基準であるICD-11やDSM-5-TR(アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル)が用いられ、これらに基づき診断されます。
吃音の診断はどこで受けられる?
吃音の診断は、精神科や心療内科、耳鼻咽喉科などの医療機関で受診可能です。
特に、声や言葉に関する問題を専門とする耳鼻咽喉科の中には、吃音に特化した外来を設けているところもあります。
また、吃音のリハビリテーションを専門とする言語聴覚士が在籍している医療機関も多く、診断から継続的なサポートまで一貫して受けられる場合があります。
保護者の対応
子どもに吃音の症状が出始めたら、保護者は驚かれるかもしれません。
大切なのは、お子さんが話している内容にしっかりと耳を傾け、詰まりがあっても焦らせず、最後まで穏やかに聞いてあげることです。
保護者が吃音を否定的に捉えず、子どもが吃音について話したい時には、その気持ちを受け止めることが重要です。
親子で吃音について話し合うことで、「どもっても、たくさんおしゃべりしてね」というメッセージを子どもに伝えられます。
子どもが「しゃべりにくい」「どうして、ぼくは『あああ』ってなるの?」と吃音について訴えることがあれば、それは子どもと吃音について話す良い機会かも知れません。
周囲の人たち・保育園・幼稚園・学校などへの働きかけ
周囲の人々の吃音への理解は非常に重要です。
吃音は、ストレスや緊張だけで生じるものではなく、本人がわざと行っているわけでもありません。
特に保育園、幼稚園、学校といった集団生活の場では、吃音に関する正しい知識を広め、周囲の子どもたちも含めた理解を深める働きかけが大切です。
吃音の理解を促すために、リーフレットや資料を活用することも有効です。
専門家による助言・指導
専門家による吃音の助言・指導は、言語聴覚士や「ことばの教室」の教員が中心となって行います。
彼らは、吃音のことを深く理解し、吃音の症状を持つ人々がより楽に話せるように、多角的な支援を提供しています。
具体的には、コミュニケーション環境を整える「環境調整」や、発話そのものに直接働きかける訓練など、年齢や状態に応じた多様な方法が用いられます。
例えば、小児の場合、保護者に対しては、子どもが話す内容に耳を傾け、焦らせずに聞くことの重要性や、吃音のある子どもに対する接し方についてアドバイスを行います。
また、学齢期の子どもには、吃音の理解を促し、必要に応じて発話の流暢性を高める練習を行います。
成人の場合は、仕事や社会生活におけるコミュニケーションの困難を軽減するために、発話訓練に加え、吃音の心理的な側面へのサポートや、職場での理解促進のための助言なども行われます。
これらの専門家は、ご本人だけでなく、家族や学校、職場など、周囲の人々が吃音のことについて正しく理解し、適切な関わり方ができるよう、具体的なアドバイスを提供しています。
支援を活用する
一定の基準を満たしていると、障害者手帳の取得を検討できます。発達性吃音の場合は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となることが多いです。障害者手帳を取得するメリットとしては、所得税や住民税の控除、公共交通機関の割引、公共施設の優待などが挙げられます。障害者求人への応募が可能になります。
障害者求人の仕組みは、雇用主にあらかじめ吃音の症状を伝えた上で採用されるため、合理的配慮を受けやすく、長期的に働きやすいという利点があります。これにより、ご自身の特性に合わせた働き方を選択しやすくなります。
吃音のある人との話し方
吃音のある人と接するときは、相手のペースに合わせることが大切です。
たとえ親切心のつもりでも、「落ち着いて」「ゆっくり話して」など、話し方のアドバイスをしたり、相手の言おうとすることを先回りしたりするのは逆効果になる場合もあります。
相手がつっかえながらも一生懸命話そうとしている間は、さえぎらずに最後まで聞いてあげてくださいね。
特に子どもと話す場合は、最後に「〜だったんだね」と話の内容を繰り返したりして、子どもが「お話しすることの楽しさ」や「伝える喜び」を感じられることを第一に接することが重要です。
吃音はどのように治療する?
症状の軽減や生活の質の向上を目的とした様々なアプローチがあります。
治療の中心となるのは、環境調整、言語訓練、カウンセリングなどです。
患者さんの年齢や吃音の状態、またその他の要因に合わせて、組み合わせて行われることが多いです。
吃音のある方が仕事をする上で大切なこと
吃音のある方が無理なく働き続けるためには、職場で工夫をすることが大切です。
まずは、自分がどのような状況で話しにくさを感じるかを把握し、周囲に理解を求めることも有効です。
伝える手段を工夫することも重要で、言葉だけでなくジェスチャーや資料なども活用できます。
まとめ~吃音(きつおん)とは?~
幼児期に発症するものだけでなく、脳の障害や極度のストレスなどによって後天的に発症するものもあります。
吃音がある人と話す時は途中で遮ったりせず、最後まできちんと聞くことが大切です。
吃音の症状の軽減や改善をはかるためには、小学校に設置されている「ことばの教室」のほかに、療育センターや病院のリハビリテーション科にいる言語聴覚士に相談する方法があります。
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