
作業活動を通じて身体と心のリハビリテーションを行う専門職である、作業療法士。
病院などの医療機関やリハビリ施設で、怪我や病気による後遺症や障害を抱えている人たちに対してリハビリを行うのが主な仕事です。
しかし、中には発達に遅れや偏りがある子どもたちに対して、“遊び“を通じてその心身の発達を促す援助をする作業療法士も。
今回は、こういった発達障害領域で活躍する作業療法士の仕事内容を紹介します。
子どもたちの仕事である“遊び”を通して、心身の発達や生活動作の獲得などを支援する方法や、その具体例などについて解説していきます。
目次
発達障害領域における作業療法士の役割とは
作業療法士(OT)にはいくつかの専門領域がありますが、その中でも主に子どもと関わることになるのが、発達障害領域といわれる分野です。
支援の対象は、先天性または後天性の病気、怪我により心身の発達を妨げるような障害を持った子どもたち。
具体的には、自閉症や軽度発達障害、知的障障、脳性麻痺、重度心身障害などを抱えている子どもたちがあげられます。
小児科のある病院や訪問看護ステーション、児童福祉施設(療育センター)などで、こういった子どもたちの発達や機能の改善、向上を促し、家庭や学校、社会でいきいきと生活できるよう支援するのが、発達領域における作業療法士の役割です。


子どもに対して行うサポート内容
発達障害をもつ子どもたちに対して作業療法士が行うサポートや治療内容としては、主に以下の4つがあげられます。
- 日常生活動作のサポート
- 感覚のサポート
- 学習のサポート
- 社会生活におけるサポート
日常生活における動作のサポート
なるべく子どもたちが自立した日常生活が送れるよう、機能の発達を促し、基本動作の獲得を支援します。
例えば、乳児期ならハイハイ、歩行、物をつかむなどの運動、そして幼児期なら食事や着替えなどの練習を行い、そのほか手先が不器用な子に対しては、日常生活に必要な指先の動作を訓練したり、はさみや定規などの道具が使えるよう、用具の工夫や指導にあたります。
また、適切な介助の仕方をアドバイスするなど、本人だけでなく家族みんなが生活しやすいようサポートすることも大切な役割の一つです。
感覚のサポート
子どものうちは、触る、見る、揺れるなど様々な感覚を十分に経験することが、学習の基礎となります。
さまざまな経験を通してしだいに感覚をつかむことで、体をスムーズに動かしたり、落ち着
いて課題に取り組んだりすることができるようになるんですね。
しかし、発達障害のある子どもの中には、「手をつなぐのが苦痛」「ぐるぐる回らないと落ち着かない」など、同じ刺激でも敏感に感じたり、逆に感じにくかったりする子がいます。
特に、先天的な脳や神経系の発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害(ASD)がある子は、周囲の人と異なる感覚処理が行われる場合が多いです。
作業療法士は、こういった子どもたちが刺激に対して適切な反応ができるよう、五感や触覚、味覚、揺れる感覚などの調整もサポートします。
学習面でのサポート
障害を抱えている子どもの認知や学習面をサポートするのも、作業療法士の大切な仕事の一つです。
工作やお絵描きなど、子どもが楽しめる要素を取り入れながら、色や形、数や大きさなど、学習の基礎となる認知機能を高める訓練や教科学習を行っていきます。
社会生活におけるサポート
発達障害を抱えている子の中には、社会適応力に偏りがある場合も多いです。
そういった子どもたちが社会の中で生活していくために必要な心の安定や忍耐力、コミュニケーションスキルを身につけるのを手伝うのも作業療法士の仕事です。
保育園や学校など集団への参加が難しい子どもに対してはその原因を追求し、適切な支援方法を考え、提案します。
“遊び”が楽しく子どもの発達を助ける
こういった発達障害を抱えている子どもたちを対象とする小児分野での治療やリハビリでは、主に遊びを通じた作業療法が行われるのが一般的です。
“遊び”は、乳幼児期の活動の多くを占めるものであり、面白ければ子どもは何度もそれを繰り返します。
子ども本人も楽しみながら、効果的に発達機能を促進させることができるんですね。
そんな子どもたちの遊びは大きく分けて、以下の3つがあります。
- 感覚運動遊び
- 構成遊び
- 社会的遊び
次はこれらの遊びの特徴について解説しながら、実際にその遊びを取り入れた作業療法の例についても1つずつ紹介していきます。
感覚運動遊び
感覚と運動を繰り返し楽しむ遊びです。
主に、砂遊びや音の出るおもちゃなどの感覚を刺激する遊びや、トランポリンなどの動く遊びなどがあげられます。
こういった感覚運動遊びを取り入れた小児作業療法には、手先の操作性を高めたり、感覚の機能を調整する役割が期待できます。
ストロービーズ遊び
市販のストリーを6〜10ミリ程度にカットし、それを洗面器やバケツいっぱいに入れてその感触を楽しむ遊びです。
触ったり、触られたりすることに対して敏感な子どもに対して、感覚機能を調整する訓練として役立ちます。
また、ビーズをひもに通してネックレスやブレスレットを作る遊びなら、両手をうまく使えない子がスムーズに手を使う訓練にもなります。
構成遊び
物を組み合わせたり、並べたり、作ったりする遊びです。
主にパズルや積み木、折り紙、お絵かきなどがあげられます。
こういった構成遊びを取り入れた小児作業療法には、認知機能や学習能力、創造性を育む役割が期待できます。
洗濯バサミアート
洗濯バサミ同士をつなげて、創作する遊びです。
円を描くようにして花を作ったり、立体的につなげて動物を作ったりすることで、楽しみながら考える力や創造性を伸ばします。
社会的遊び
仲間といっしょに取り組む遊びです。
主に、ごっこ遊びやかくれんぼなどがあげられます。
こういった社会的遊びを取り入れた小児作業療法には、集団の中で仲間意識を育み、社会性を身につける役割が期待できます。
そうじき遊び
新聞紙やティッシュなどの紙類を準備し、さまざまな大きさにちぎります。
そして、ちぎった紙をストローで吸いながら、ボウルや箱にうつすという遊びです。
制限時間内に早く全ての紙をうつし終わった方が勝ち、時間内に多くうつしたグループが勝ち、などのルールを設けてチーム戦にすれば、友達と協力する力が身に付きます。
【参考URL】作業療法士が考える『生活動作と遊びのアイディア集』〜児童発達支援に携わる皆様へ〜-一般社団法人 鹿児島県作業療法士協会


上手に遊ぶためのポイント
作業療法に“遊び”をどのように取り入れるかは、子どもの状態や目標によって異なります。
それを見極めた上でその子にとって適切な作業を選択し、上手に遊ぶことをサポートするのが作業療法士の仕事だといえるでしょう。
まずは、子どもが自然と挑戦したくなるよう、声かけや見せ方、行わせ方を工夫するところから始めましょう。
また、ちょっとしたチャレンジや背伸びは子どもの成長を助けてくれます。
このため程よく悩み、工夫しながらも大失敗はしないよう、様子を見ながら能力と難易度のバランスをほどよく調整してあげることも大切です。
オーダーメイドの“遊び”で子どもたちの成長を支えよう
発達障害領域で活躍する作業療法士は、日常生活や運動、学習、社会生活などでつまずきが生じている子どもたちに対し、その心身の発達を援助するのが仕事です。
作業療法を上手に取り入れた“遊び”を通して、子どもたちが「楽しい」「面白い」と思いながら成長できるよう、必要な能力の獲得や機能改善を促します。
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