
精神保健福祉士は、精神に障がいがある人や、その家族の人たちの相談を受け、障害者支援施設の紹介や就労へのアドバイスを行うことで、生活課題の改善を図ることを目的として関わり、サポートする仕事です。
いわゆる精神科ソーシャルワーカー(PSW)とも呼ばれ、医師・臨床心理士などと連携して業務を行ったり、行政機関での各種申請や手続き、社会保障制度の案内も担ったりしています。
目次
精神保健福祉士とは
精神保健福祉士とは、主に精神的な健康問題を抱える人々やその家族に対してさまざまな支援を行う専門職です。
医療機関、福祉施設、あるいは学校などの教育現場において、困難を抱えた方々の相談に乗り、適切な支援制度の案内や、社会や学校への適応を促す役割を担っています。
具体的には、患者の日常生活を円滑に送るための支援として、金銭管理や家事援助などの生活面での助言や指導を行います。
また、学校におけるトラブルや不登校などの問題に対しても、本人や家族と連携を取り、学業継続ができる環境づくりに努めています。
さらに、医師や臨床心理士、教育関係者らと協力しながら、患者が社会復帰や自立に向かう道筋を共に描くことも重要な仕事です。
この職種では、相手との信頼関係が不可欠であり、単に問題解決を図るだけでなく、本人の気持ちを丁寧に聴くことが求められます。
支援の過程では、本人の成長を感じ取る喜びだけでなく、一緒に悩みを共有することも多くあります。
近年では学校現場におけるサポート体制の充実も進んでおり、精神保健福祉士の果たす役割がますます重要視されています。
現代社会では、ストレスや心の病を抱える人が増加傾向にあるため、それに対応するための支援も多様化しています。
精神保健福祉士は、こうしたニーズに応じて幅広いサポートを提供し、本人だけでなく、その周囲の環境改善にも注力しているのです。
精神保健福祉士の仕事について詳しく
精神保健福祉士におけるストレスチェックについてはこちらへ


精神保健福祉士になる方法
精神保健福祉士になるには、精神保健福祉士国家試験を受験し合格しなければなりません。
そして、精神保健福祉士の国家試験を受ける受験するには、その受験資格を満たす必要があります。
精神保健福祉士の受験資格を取得するルートは、大きく分けて以下の4通りが存在します。
- 福祉系の学校で指定科目を履修するルート
- 福祉系の学校で基礎科目を履修するルート
- 社会福祉士登録者ルート
- その他の学校を卒業した人のルート
これらのルートからわかるように、精神保健福祉士を目指したからといってすぐに資格を取得することはできません。
また、自分のこれまでの経歴から資格を取得するまでのルートが変わってくることもあるので、効率よく最短で資格を取得できるように、確認しておきましょう。
精神保健福祉士に学歴が必要?
精神保健福祉士は国家資格であり、資格を取得するためには一定の学歴や研修の条件を満たす必要があります。
学歴がまったく関係ないわけではありませんが、中卒や高卒であっても精神保健福祉士になる道はあります。
まず、精神保健福祉士になるには、国家試験の受験資格を得る必要があります。
この受験資格を得る方法の一つに、厚生労働省が指定する養成施設の修了があります。
養成施設には「一般養成施設」と「短期養成施設」があり、これらでの学習を通じて専門的な知識と技術を身につけます。
たとえば、福祉系大学を卒業していない場合は、一般養成施設に1年以上通うことで学び直しが可能であり、そうして受験資格を得られます。
一方で、福祉系の大学や短大を卒業している人は、養成施設での学習年数が短縮されたり、相談業務の実務経験が一定年数あれば受験資格が認められるケースもあります。
したがって、高卒から精神保健福祉士を目指す場合は、福祉系専門学校や一般養成施設で申請条件を満たしつつ資格取得を目指すのが一般的です。
中卒の方の場合は、まず高卒程度の資格を取得するなど、学歴を補うことが求められることが多いですが、一定の実務経験や学びの経路を得て養成施設に進むルートも設けられています。
精神保健福祉士になるには、単に学歴だけでなく、勉強や実務経験を積むことが重要です。
したがって「学歴がないから無理」ということはなく、正しいステップを踏むことで国家資格取得に向けた道は開かれています。
福祉系の大学を卒業している方
福祉系の大学を卒業し、指定された科目を履修している場合、精神保健福祉士国家試験の受験資格を満たしていることになります。
一般的に4年制の大学を卒業すると、自動的にこの受験資格を得ることが可能です。
これは、大学でのカリキュラムに精神障がい者の保健および福祉に関する必要な科目が組み込まれているためです。
また、大学卒業者は、受験時に特別な実務経験を要しないことが多いですが、例外的に、指定の科目が不足している場合は、追加の実務経験や科目履修が求められることもあります。
指定科目には、精神保健の基礎知識や相談援助の技術に関する科目が含まれ、これらは専門的な支援に必須です。
さらに、福祉系の大学での学びは2年程度の専門的な知識の積み重ねが前提となっている場合が多く、専門的な知識をしっかり身につけたうえで試験に臨めます。
受験までの準備期間の目安として、大学在学中に科目修得を進めることができ、卒業後すぐに受験を目指せる点が大きなメリットです。
受験自体は、大学での基礎的な学びを土台に法律、福祉制度、精神医学など多岐にわたる範囲が問われるため、大学での学びが効率的な試験対策にもつながります。
以上のように、福祉系の大学を卒業し所定の科目を履修することは、精神保健福祉士資格取得の近道となり、国家試験受験への確実なステップとなります。
社会福祉士の国家資格を持っている方
社会福祉士の国家資格を持っている方が精神保健福祉士の国家試験を受験するには、専門学校などにある短期養成課程で6ヶ月以上学ぶことが必要です。
この短期養成課程は、医療福祉関連の学校で開設されており、社会福祉士としてすでに基礎的な福祉知識や相談援助技術を有していることを前提に、精神保健福祉士に必要な専門的知識や技術を効率的に学べるカリキュラムが組まれています。
短期養成課程の学びでは、精神医学の基礎や精神障害者の生活支援、社会復帰促進のための支援方法が中心となり、精神疾患の理解や精神保健福祉制度の運用についても深く学びます。
6ヶ月という短期間ながらも密度の濃い実践的な内容が特徴で、現場で即戦力として働くために必要な知識が体系的に習得できます。
このルートにより社会福祉士の資格保持者は、長期間の追加実務経験や専門学校の長期コースで学ぶ必要がなく、短期間で精神保健福祉士の国家試験の受験資格を得られるのが大きなメリットです。
受験に向けては、短期養成課程で修得した専門知識を基に、試験対策が重要です。
社会福祉士としての基盤を活かしながら、精神保健の分野での専門性を高めることで、両資格を持つ専門職として幅広い分野で活躍が期待できます。
社会人として働きながら精神保健福祉士になるには?
社会人が働きながら精神保健福祉士になるには、専門学校などで設定されている通信や夜間のコースを利用するのが一般的です。
これらの学校は、国家資格である精神保健福祉士になるために必要な知識や技術を効率よく学べるよう工夫されています。
働きながら学ぶ環境に合わせたカリキュラムやサポート体制が整っているため、多忙な社会人でも無理なく資格取得を目指せます。
精神保健福祉士になるには、計画的に学び、国家試験合格を目指すことが求められます。
精神保健福祉士の資格についてはこちらへ
精神保健福祉士を目指す際の年齢について詳しくはこちらへ
精神保健福祉士の国家試験を受けるためには
精神保健福祉士の国家試験を受験するには、まず学歴に応じた受験資格を取得する必要があります。
福祉系の大学や専門学校で指定科目や基礎科目を履修し、一定期間の実務経験を積むパターンが一般的です。
また、社会福祉士の資格を持つ場合は短期養成施設で所定の課程を修了することで受験資格を得られます。
一方で福祉系以外の学歴の方も、一般養成施設にて必要な期間学び、実務経験を積むことで受験資格の取得が可能です。
学歴によって必要な学習期間や実務経験が異なるため、事前に自分の経歴と照らし合わせてプランを立てることが重要です。


資格取得までの流れ
精神保健福祉士の資格取得の流れは、まず自分の学歴や職歴に合った受験資格の確認から始まります。
指定された科目の履修や相談業務の実務経験、養成施設での学習など、様々なルートが用意されています。
これらの条件を満たすことで国家試験の受験資格が得られます。
次に、受験資格を得た後は国家試験の準備を進めます。出題範囲は広く専門的な内容を含むため、計画的な学習と対策が必要です。
試験の合格を経て、晴れて精神保健福祉士の資格を取得します。
資格取得後は、精神保健福祉士としての実務経験を積みながら、さらなるスキルアップに取り組むことが望まれます。
資格取得までには時間と努力が必要ですが、計画的に進めることで確実に目指すことが可能です。
福祉系の学校で「指定科目」を履修するルート
精神保健福祉士の受験資格を得る1つ目のルートは、福祉系の大学や短大・専門学校などで、厚生労働大臣が指定する精神障がい者の保健および福祉に関する指定科目を履修することです。
4年制の福祉系大学で指定科目を履修した場合は、卒業するだけで精神保健福祉士の受験資格を取得が可能になります。
3年制または2年制の短大・専門学校で指定科目を履修・卒業した場合は、卒業後に対象となる施設・職種で一定期間の相談業務を経験することで、その受験資格が得られます。
具体的には、3年制の短大・専門学校卒の場合は1年以上、2年制の短大・専門学校卒の場合は、2年以上の相談業務経験が必要です。
福祉系の学校で「基礎科目」を履修するルート
精神保健福祉士の受験資格を得る2つ目のルートは、福祉系の大学や短大・専門学校などで、厚生労働大臣が指定する精神障がい者の保健および福祉に関する基礎科目を履修します。
その後、短期養成施設などに6ヶ月以上通学するルートです。
4年制の福祉系大学で基礎科目を履修した場合は、その後短期養成施設などで指定されたカリキュラムを履修すれば、精神保健福祉士の受験資格を取得可能です。
それに対して、3年制または2年制の短大・専門学校卒の場合は、それぞれ2年または1年以上の相談業務を経てから短期養成施設などに通学することで、その受験資格が得られます。
その他の学校を卒業した人のルート
福祉系の学校を卒業していない人でも、一般養成施設に1年以上通学することで、精神保健福祉士になることができます。
福祉系以外の学部で4年制大学を卒業した人は、そのまま一般養成施設に1年以上通学すれば、精神保健福祉士の受験資格を取得可能です。
ただし、それにくわえて3年制の短大・専門卒は1年以上、2年制の短大・専門卒は2年以上、そして高卒の場合は、4年以上の相談業務経験が必要になります。
その後、一般養成施設に通学することで、精神保健福祉士の受験資格が得られます。
社会福祉士登録者ルート
社会福祉士の資格を取得、登録している人は、短期養成施設などで6ヶ月以上学べば、精神保健福祉士の受験資格が得られます。
社会福祉士とは、高齢者や障害者、子どもや低所得者など幅広い層を対象に支援を行う介護職種のことです。
日常生活を送ることが困難な人に対して、相談や助言、支援などを行うなど、その業務内容が精神保健福祉士と類似しているため、短期養成施設などへの通学のみで受験資格を取得できます。
精神保健福祉士の養成施設とは
養成施設とは、精神保健福祉士なるのに必要な専門知識・技術を習得する学校のことです。
養成施設には、一般養成施設と短期養成施設の2種類があり、主に医療・福祉系の専門学校がその役割を担っています。
一般養成施設
福祉系以外の学校を卒業した人向けの養成施設です。
医学や福祉に関する基礎科目や、精神保健福祉の知識を学ぶ専門科目など、精神保健福祉になるのに必要なスキルを一から学べます。
この一般養成施設で1年以上学び、所定の課程を修めることで、精神保健福祉士国家試験の受験資格が取得可能となります。
短期養成施設
福祉系の学校で基礎化科目を履修した人や、社会福祉士の登録者など、すでに福祉職に必要な知識がある程度身についている人向けの養成施設です。
精神医学や、精神障害福祉など、精神保健福祉士となるのに必要な専門知識を、短期間で集中的に学びます。
6ヶ月以上通学し所定の課程を修めることで、精神保健福祉士国家試験の受験資格が得られます。
中卒・高卒の方
中卒・高卒関係なく実務4年以上で受験資格発生のため、学歴取得の必要はありません。
神戸医療福祉専門学校中央校の精神保健福祉士科では
神戸医療福祉専門学校中央校の精神保健福祉士科は、夜間一年制の一般養成施設です。
平日の夜と土日の時間帯授業が受けられるので、社会人の方でも無理なく通学できるのが嬉しい魅力!1年間で即戦力になる精神保健福祉士が目指せます。


受験要件を満たせば、精神保健福祉士の試験を受けることができます。
試験は毎年、1月の下旬から2月上旬ごろの日程で行われます。出願は前年の9月上旬から10月上旬頃です。
出願や試験に関する要項は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページに掲載されているので、そちらをご覧ください。
[精神保健福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
精神保健福祉士 国家試験の内容
精神保健福祉士の国家試験は、精神障害者やその家族への支援に必要な幅広い知識を問う筆記試験で構成されています。
試験は17科目で構成され、それぞれが専門的な理論や制度、支援技術に関する内容となっているのが特徴です。
例えば「精神疾患とその治療」では、うつ病や統合失調症といった主要な精神疾患についての理解が求められます。
また、「精神保健の課題と支援」や「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」では、実際の支援現場で必要な法律や制度の仕組み、具体的な支援方法に関する知見が問われます。
さらに「心理学理論と心理的支援」「社会理論と社会システム」などの科目では、心理的援助の基礎理論や社会構造を理解し、支援活動に生かす能力が問われるため、試験勉強には心の健康に関する幅広い知識の習得が欠かせません。
受験生はこれらの科目を通じて、精神障害者の生活環境やニーズを総合的に把握し、適切な支援を計画・実施する力を身につけることが求められます。
国家試験に合格するためには、単なる知識記憶だけでなく、実際の支援現場で遭遇し得る事例を想定した理解力や応用力が重要です。
そのため、多くの受験者は過去問題や模擬試験を活用し、科目ごとの重点ポイントを押さえつつ、現場での支援に活かせる実践的な知識を着実に身につける学習を行っています。
精神保健福祉士国家試験の内容は、支援の専門性を深めるための学習を体系的に行ううえで、大きな指針となる試験内容です。
精神保健福祉士 国家試験の合格率
精神保健福祉士試験の合格率は、2019年以前の過去5年間で、60%程度となっています。
同じく福祉系の国家資格である社会福祉士の、過去5年間の合格率が25%〜30%程度であることと比べると、比較的合格率は高いです。
ただし、試験の合格基準は60%以上の得点と、全17科目において最低1問は正解することなので、油断せずに試験対策をしましょう。
精神保健福祉士 国家試験合格に向けた勉強方法
精神保健福祉士の国家試験合格を目指す際、働きながら効率的に勉強するには計画的な時間管理が重要です。
まず、日々の生活の中で勉強時間を確保できる工夫が必要で、たとえば朝の通勤前や昼休み、帰宅後のまとまった時間を活用するとよいでしょう。
勉強の際は、過去問を中心に出題傾向を把握し、自分の弱点を見極めて重点的に対策を進めることがおすすめです。
資格取得を目標にすると、学習モチベーションも維持しやすくなります。
また、実務と並行して勉強することが多いため、疲労管理や栄養、休息も考慮しながら無理なく続けることが大切です。
最近の傾向として、模擬試験やオンライン教材を活用する人が増えており、自分のペースに合わせて柔軟に学習計画を立てられます。
さらに、勉強仲間や同じ目標を持つコミュニティに参加することで情報交換ができ、励みになるためおすすめです。
精神保健福祉士の国家試験は知識の幅が広いため、「勉強の継続」と「質の高い復習」が合格を左右します。
したがって、働きながら資格取得を目指す際は、短時間でも集中した学習時間を確保し、過去問を活用しつつ、計画的に知識の定着を図ることが成功への鍵となります。
精神保健福祉士の年収
精神保健福祉士の平均的な給料の額は、およそ20万~30万円とされています。
勤務先や役職などによっても変わってきますが、際立って差が出るということはあまりありません。
年収にするとおよそ300万~500万円ほどになります。
精神保健福祉士の給料は国家公務員に準じた体系になっており、基本給はそれほど高くはないものの、各種手当やボーナスなどの面で優遇されています。
給与水準の比較的高い職場としては、精神科の専門病院や精神保健福祉センターのような行政機関などが挙げられます。


精神保健福祉士に必要な能力
精神保健福祉士にとって最も大切なことが「傾聴する」姿勢です。
精神保健福祉士の主な仕事は、患者さんの内面を深く知ることです。
心の奥底の気持ちを話すまでに必要な時間と関係作りが求められます。
そこで、相手の考えや思いに耳を傾けて信頼関係を築き、具体的な悩みや思い等、何を考えておられるのかを把握するために傾聴する力が求められるのです。
そのため精神保健福祉士になるには、傾聴力を養い、患者さんに対して適切なサポートをできるように努力する事が大切です。
精神保健福祉士のスキル向上のために
精神保健福祉士として活躍するためには、知識や技術はもちろん、より深く専門的な知識を学び続けなければなりません。
福祉業界は新しい制度が次々と生まれ、常に時代のニーズや状況に敏感に捉え、より深く、専門的な知識を日々学び続けることが、精神保健福祉士として活躍するために必要なことです。
神戸医療福祉専門学校中央校の精神保健福祉士科では
神戸医療福祉専門学校中央校では、実習カリキュラムが非常に豊富で卒業後、即戦力として活躍できる技術を身につけることができます。
精神保健福祉士を目指す人の理由
困っている人の問題を解決できることが、なによりも嬉しいと感じる方が、精神保健福祉士を目指しているようです。
患者さんと寄り添いながら、悩みを共有して課題を解決する。
患者さんと二人三脚で、生活をサポートして、生活改善していく姿を見ることが何よりも嬉しいそうです。


精神保健福祉士の活躍の場所
精神保健福祉士の活躍の場は下記の通り、幅広くあります。
- 医療機関:精神科病院や総合病院の精神科、メンタルクリニック
- 行政機関:保健所、精神保健福祉センター、市町村の保健センター
- 障害者支援施設:地域活動支援センター、就労継続支援施設
病院や診療所、その他の民間施設なら個別の採用試験に合格すれば、精神保健福祉士として働くことが可能です。
保健所や保健センターなどの職員として働く場合は、地方公務員試験に合格する必要があります。
精神保健福祉士の働く場所に関してはこちら
精神保健福祉士の就職先に関してはこちら
一般企業で働く精神保健福祉士に関してはこちら
①医療機関(精神科病院・精神科クリニック)
医療機関において、精神科病院や精神科クリニックは精神疾患を抱える患者の治療と生活支援を中心に取り組んでいます。
これらの施設では、医師や看護師、臨床心理士と連携しながら、患者の精神状態の安定を促進し、日常生活の質を向上させるための支援が行われています。
具体的には、症状の管理だけでなく、患者が社会復帰を目指す上で必要な生活技能の習得支援や環境調整を実施します。
例えば、服薬管理やストレスコーピングの技術指導に加え、就労支援や家族とのコミュニケーション改善など、多面的なサポートを提供しています。
また、医療機関は緊急対応が求められる場面も多く、精神保健福祉士やソーシャルワーカーが患者の状態を把握し、適切な福祉サービスや行政支援への橋渡しを行う役割も担っています。
こうした連携を通じて、患者の生活課題解決を目指し、退院後も継続して支援を受けられる体制づくりに注力しています。
近年では、退院支援プログラムの導入により、患者が地域で自立して生活できるよう支援が強化されており、医療機関の役割は単なる治療に留まらず、患者の社会復帰を包括的に支える方向へと広がっています。
こうした支援体制により、精神疾患を持つ方々がより良い生活を送るための環境整備が進められています。
②教育機関(小学校・中学校など)
教育機関における精神保健福祉士の役割は、児童生徒の心の健康を支えることに特化しています。
小学校や中学校では、いじめや不登校、発達障害など多様な課題を抱える子どもたちが増えており、こうした問題への早期対応が求められています。
精神保健福祉士は、心理的な支援だけではなく、家庭環境や社会的背景も含めた総合的なサポートを行い、子ども一人ひとりに合った適切な対応策を提案します。
たとえば、不登校のケースでは、学校生活への復帰プランの作成や、保護者や教師との連携を図ることで、復学支援を進める役割を担います。
また、児童福祉や教育現場の経験を活かし、発達障害など特別な配慮が必要な児童への個別支援計画の作成にも関与しています。
文部科学省の調査によれば、不登校の児童生徒数は年間10万人を超えており、精神的なサポートを含めた多職種連携が欠かせません。
そのため、精神保健福祉士はスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとも密接に連携しながら、心理的ケアから環境調整まで幅広い支援を提供しています。
教育機関での支援は単純な心理相談にとどまらず、児童の成長段階や発達に応じた専門的な介入を行う点が特徴です。
地域の関係機関との連携も重要であり、例えば児童相談所や医療機関と協働し、必要に応じて専門的治療や福祉サービスへの橋渡しも行います。
精神保健福祉士が教育現場に常駐することで、子どもたちや保護者のストレス軽減につながり、学校全体のより良い教育環境づくりに貢献しています。
こうした活動は、子どもたちの自己肯定感の向上や社会性の育成にも好影響を与えています。
③福祉施設
福祉施設は、障がいのある人々が地域で安心して暮らせるよう、生活支援や就労支援を行う場として重要な役割を果たしています。
精神保健福祉士はこうした施設で、利用者の生活全般をサポートし、社会参加の促進に向けて多面的な支援を展開します。
具体的には、日常生活での困難を軽減するために、家事や健康管理などのスキル習得を支援するとともに、福祉サービスや医療機関との調整役としても活躍しています。
また、就労支援を行う施設では、利用者が適性に合った仕事を見つけ、長く続けられるよう職場環境の調整や職業訓練をサポートします。
たとえば、障害者就労支援センターでは、利用者の能力や希望を踏まえた個別の支援計画を作成し、段階的に社会復帰を目指す体制が整っています。
調査によると、障がい者福祉施設のうち約6割が精神保健福祉士を配置しており、利用者の心理的なケアや社会交流の支援に重要な役割を担っています。
具体的には、利用者本人の希望や課題を尊重し、自己決定を促すための面談やグループ活動を通じたコミュニケーション支援が日常的に行われています。
これにより、孤独感の解消や自尊感情の向上が期待され、精神的安定に寄与しています。
さらに、福祉施設では地域との連携も欠かせません。地域のボランティア団体や行政機関と協働し、外出支援やイベント参加を通じて社会的なネットワークを広げる取り組みも盛んです。
こうした活動は、利用者の社会的孤立を防ぎ、地域包括ケアの促進につながっています。
近年ではICTを活用した支援も進み、遠隔での相談やモニタリングを行いながら柔軟に対応するケースも増えています。
福祉施設における精神保健福祉士の役割は、単なる相談援助にとどまらず、利用者の生活全体を見据えた包括的支援へと広がっています。
このような支援を通じて、利用者が自立した生活を営むことができる環境づくりに貢献しています。
④児童福祉施設
児童福祉施設は、さまざまな事情で家庭での生活が難しい子どもたちに対して、安全で安定した生活環境と成長の機会を提供することを目的としています。
ここでは、福祉の専門職が子どもたちの相談支援や生活援助に加え、自立や社会参加を促すための具体的な支援を実施しています。
たとえば、児童養護施設では、虐待や離別などで家庭を離れた子どもたちが集団生活を送ります。
スタッフは心理的なケアだけでなく、学校生活や趣味活動、進学・就労に関する助言といった多面的なサポートを行い、子どもの社会性や生活能力の向上に努めています。
ある調査によると、約70%の児童福祉施設で独自のキャリア教育プログラムが導入されており、早期からの就労意識の啓発を強化しています。
また、乳児院では乳幼児を対象に、特に情緒面の安定を目的とした専門的な支援が行われています。
ここでは、適切な養育環境の提供に加えて、発達障害や健康問題などの早期発見にも力を入れ、医療機関との連携体制が整備されています。
こうした支援により、多くの子どもが健やかな成長を遂げており、一定の割合で里親家庭や養子縁組により新たな家族と結ばれています。
さらに、児童福祉施設では子どもたちの将来を見据え、生活スキルやコミュニケーション能力を養うプログラムも展開されています。
具体的には、金銭管理の指導や礼儀作法の訓練、自己表現力を高めるワークショップなどが組み込まれており、社会での自立を支援しています。
このように児童福祉施設は、多様な背景を持つ子どもたちのニーズに的確に応えつつ、将来の社会生活に向けた準備を支援しています。
その過程で、福祉専門職は子ども一人ひとりの成長段階や課題に合わせて寄り添いながら多面的な支援を展開し、子どもたちの安心できる環境づくりに貢献しています。
⑤相談支援事業所
相談支援事業所は、障害のある方やその家族が安心して地域で生活できるようサポートする重要な拠点です。
ここでは、日常生活に関する幅広い悩みや課題に対応し、利用者一人ひとりに合った支援計画の策定が行われます。
具体的には、本人の希望や生活環境を踏まえたサービス利用計画書の作成を行い、それに基づいて障害福祉サービスなどの適切な支援が提供されるよう調整を行います。
また、相談支援事業所では行政や医療機関、福祉施設と密接に連携しながら、必要な手続きの案内や関係機関との調整を行うことも特徴です。
例えば、障害者総合支援法に基づくサービスを利用する際の申請支援や、就労支援施設との接続支援など、多岐にわたる支援が展開されています。
統計によると、ある地域の相談支援事業所利用者の8割以上が生活の質の向上を実感しており、本人の自己決定を尊重した支援の効果が見られています。
さらに、障害特性や家族環境なども加味しながら、生活上の困難を軽減し、自立支援や地域移行支援に繋げる役割も担っています。
相談支援専門員が利用者の声に耳を傾け、定期的なフォローアップを通じて環境の変化に柔軟に対応することで、より実効性のある支援が実現されます。
こうした包括的な支援体制により、地域で安心して暮らせる社会の実現に寄与しているのです。
⑥矯正施設(福祉専門官)
矯正施設に勤務する福祉専門官は、受刑者の中でも特に高齢者や障がいのある方々を対象に、円滑な社会復帰を支援する役割を担っています。
彼らが抱える問題は多岐にわたり、医療面や福祉面でのサポートが必要不可欠です。
福祉専門官は、刑務所内の医療機関や精神保健施設と連携し、個々の健康状態を把握するとともに、必要な治療やリハビリ計画の調整を行います。
また、出所後の生活環境を整えるため、地域の福祉施設や介護サービス機関などとも密に連絡を取り合い、住居の確保や生活支援計画を策定します。
例えば、高齢の受刑者では介護度の上昇による支援の変化が予想されるため、退所後も継続的なケアが受けられるよう環境を整えることが重要です。
障がいをもつ受刑者の場合は、障害の特性に応じた支援体制の構築が求められ、福祉専門官は障害者総合支援法に基づいたサービス利用の手配なども行います。
加えて、就労支援に関しては、職業訓練施設や就労継続支援事業所と調整し、社会参加への道筋をつけることも役割の一つです。
こうした多面的な調整活動を通じて、受刑者が社会内で孤立せず、再犯防止に繋がる包括的な環境づくりに貢献しています。
福祉専門官の働きは、刑務所という特殊な環境内にとどまらず、社会全体の安全と福祉を支える重要な役割を果たしているのです。
⑦保健所・保健センター
保健所や保健センターは地域の健康課題に対応する拠点として、心の健康に関する多様な支援を提供しています。
特に精神的な健康相談では、ストレスや不安、うつ症状など心の不調を早期に発見し、適切な対処や医療機関への紹介を行う役割が重要です。
例えば、東京都のある区の保健センターでは、年間約300件の心の相談を受け付け、問題が深刻化する前に介入することで相談者の生活の質向上につなげています。
また、地域住民の精神保健予防のために、ストレスマネジメント講座やセルフケアの指導、メンタルヘルスの啓発イベントを定期的に開催し、心の健康維持を支援しています。
具体的には、職場でのストレスチェック後のフォローアップや子育て世代向けのコミュニケーション教室があるなど、多様なプログラムが地域ニーズに合わせて運営されています。
保健所や保健センターの支援は、単なる相談受付にとどまらず、地域の福祉機関や医療機関と連携した総合的な支援体制の構築にも力を入れています。
これにより、ひとりひとりの個別ニーズに対応した包括的支援が可能となり、社会参加や生活の安定化を図っています。
例えば、アルコール依存症や引きこもりの方へのケースワーク支援を通じて、復職や地域活動への参加をサポートする取り組みも行われています。
こうした活動は、地域全体のメンタルヘルスの底上げを促し、住民が安心して暮らせる環境づくりに大きく貢献しています。
保健所・保健センターは地域に根ざした精神保健福祉の要として、多角的な支援を展開し、命と暮らしを支える重要な拠点であると言えます。
⑧精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、地域における精神障がいを持つ人々やその家族への包括的な支援提供を目的とした重要な機関です。
ここでは、病院での治療だけでは対応しきれない生活面や社会復帰に関する相談支援が行われています。
具体的には、専門職が協働して、精神障がい者の生活環境の整備や就労支援、心理的なケアを支援しながら、本人が自立した日常生活を送れるようサポートします。
支援の手法の一例としては、生活に必要なリハビリテーションや地域資源の活用などが挙げられます。
厚生労働省が2019年に公表したデータによると、精神保健福祉センターを利用した相談件数は全国で年間約40万件に上り、年々増加傾向にあります。
これには、うつや不安障害、統合失調症などの多様な精神疾患に関する相談が含まれ、各センターは個別ニーズに応じてきめ細かい対応に努めています。
また、地域ネットワークの構築も重要な役割の一つです。
センターは福祉サービスや医療機関、行政機関と連携を深め、利用者が適切な支援につながるよう調整役を担っています。
この連携により、たとえば退院後の地域生活支援や就労継続支援、社会復帰プログラムの充実に寄与しています。
さらに、地域住民の心の健康を守るため、メンタルヘルスに関する講演会や相談会を開催し、予防と早期発見にも力を入れています。
精神保健福祉センターが提供する多角的な支援は、ただ単に病気の治療を超えて、本人の尊厳を重視した生活全般の充実を目指している点が大きな特徴です。
こうした取り組みにより、一人ひとりが安心して生活できる地域社会の実現に貢献しているのです。
神戸医療福祉専門学校中央校の精神保健福祉士科では
神戸医療福祉専門学校の精神保健福祉士科では、就職率が97.3%と非常に高い数字を誇っています。
そのため、精神保健福祉士になりたい方にとっては、目標に近づける専門学校と言えるでしょう。
精神保健福祉士のやりがいとは
精神保健福祉士の仕事では、その業務を通して様々なやりがいを見つけることができます。
精神科病院などで生活相談業務にあたる中では、社会から一旦離れざるを得なくなってしまった患者さんが再び社会復帰していく姿を見ることができます。
人の人生の役に立てたという実感は、大きなやりがいにつながるでしょう。
また、仕事を通してたくさんの人の人生に触れます。
人の人生を知り、人間というものをより深く知ることで、自分自身も人として成長することができるのです。
>>精神保健福祉士のやりがいについてはこちら


精神保健福祉士の現状と将来性
最近では、社会全体の「心の問題」という大きなテーマに取り組むために、積極的な活動が求められています。
教育の分野では一部の小中学校が、スクールソーシャルワーカーとして精神保健福祉士を採用し、いじめや不登校などの問題解決に向けて取り組みを進めています。
また同じように一般企業でも、働く人向けのストレス対策、メンタルケアなどを導入するところが増えてきているのです。
また、超高齢化社会を迎えるにあたって、認知症などの精神疾患を抱える高齢者も、今後増加が予想されます。
それにともなって、介護施設での精神保健福祉士の求人も多くなるでしょう。このように精神保健福祉士の仕事の幅は、時代の変化とともに広がってきていきます。
精神保健福祉士とカウンセラーの違いに関してはこちら
精神保健福祉士と臨床心理士の違いについてはこちら
まとめ~精神保健福祉士(PSW)になるには~
精神保健福祉士になるには、国家試験を受験して国家資格を取得しなければならないため、目指したからといってすぐになれるわけではありません。
時代とともに、患者さんのニーズや状況が大きく変化してくるため、精神保健福祉士になることがゴールなのではなく、いかにニーズに合わせて患者さんに寄り添えるかが重要になってきます。
そのため、日々専門性の知識やそれ以外の学問についても、学んでいく姿勢が大切になります。
神戸医療福祉専門学校の精神保健福祉士科では、国家試験の合格率は、96%!(※2015~2023年度実績) 通学制ならではの講義・演習・実習を組み合わせたカリキュラムで、夜間1年間で国家試験合格と、就職活動をサポートします。 ご興味がある方は、ぜひ以下のオープンキャンパスや精神保健福祉士科の詳細情報をご覧ください。精神保健福祉士を目指すなら神戸医療福祉専門学校で学びませんか?
高い合格率に裏付けられ、希望者の就職率も100%に達しています。(※2020年度実績)
卒業生の声
「利用者さんの役に立てるよう学び続けていきたい。」(2013年度卒業)
「患者さんの暮らし全般を支えることができる。」(2011年度卒業)
「自分自身の成長を実感できる仕事。」(2010年度卒業)
「国家資格の取得を通して仕事の幅を広げる。」(2009年度卒業)
ご興味がある方はぜひ以下のリンクより学校の詳細をご覧ください!