不登校の児童生徒が自分らしさを取り戻し、未来へ一歩を踏み出す伴走者への道

こんにちは。精神保健福祉士科教員の丹家です。
私たちの社会福祉・精神保健福祉士一般養成施設では、すでに社会での豊かな経験をお持ちの方や、新しいキャリアを通じて社会に貢献したいと願う多様なバックグラウンドを持つ仲間たちが、お互いを尊重し合いながらアットホームな環境で学んでいます。
今回は、私が過去に経験したフリースクールでの支援の日々を振り返りながら、現代社会において精神保健福祉士の役割とやりがいについてお話しします。
◆ 試行錯誤の日々を支えてくれた、支援のネットワークと温かい繋がり
かつて私が、大学院に在籍していた頃、社会的ひきこもりや不登校の家族会からのご紹介をきっかけに、とあるフリースクールで精神保健福祉士として非常勤職員をしていました。
その場所はお寺が母体となっており、代表を務めるのもお坊さんでしたが、宗教色は一切なく、子どもたちが安心して過ごせる空間が保たれていました。当時、専門資格を持つスタッフは私一人だったため、限られた勤務期間の中で「自分に何ができるだろうか」と、試行錯誤と模索を繰り返す日々でした。
しかし、決して孤独ではありませんでした。大学院に戻れば、教員や先輩、同期の仲間たちがいつでも相談に乗ってくれました。さらに、家族会の皆さまや後輩たちも、多様なアイデアやネットワーク作りに快く力を貸してくださったのです。この温かい繋がりこそが私の大きな励みとなり、専門職としての「仕事のやりがい」を深く実感する原動力となりました。
◆ 「自分たちの存在が認められた」真夏のバンの荷台での忘れられない青春
フリースクールには農園があり、子どもたちと一緒にゴーヤやキュウリ、トマト、ナス、そして九条ネギなどを大切に育てていました。特に夏野菜は、昨日収穫したばかりの野菜が、翌朝にはまるで元通りになったかのように実っているほどの豊作でした。私を含め、食べ盛りの子どもたちと一緒に、自分たちの手で収穫した瑞々しい野菜でお腹いっぱいの昼食を囲んだ時間は、今でも大切な思い出です。
野菜を育てる活動は、ただ食べるだけにとどまりません。お寺の前でそのまま地域の方に向けて販売したり、トマトを特製のケチャップに加工したりしました。また、いちごが収穫できた季節には、丁寧にジャムへと仕上げて近くのスーパーの店頭に立ち、自分たちの手で販売する経験も重ねました。
そんなある8月の真夏のことです。収穫の途中にバンの荷台で涼を取りながら休憩をしていたとき、私たちの様子を見ていた近隣の農家の方が、冷たいすいかとアイスを差し入れてくださったのです。思いがけないサプライズに、普段は比較的言葉数の少ない子どもたちが一丸となって歓喜の声をあげ、笑顔ですいかにかぶりつきました。あの瞬間は、まさに彼らにとっての「青春そのもの」でした。
この出来事は、どこにでもある何の変哲もない日常のひとコマかもしれません。しかし、社会から一旦距離を置いていた、彼ら彼女らにとって、それは「自分たちの存在が地域に認められ、誰かに気に掛けてもらえている」という、自己肯定感と安心感を肌で感じられた決定的な瞬間だったのです。
◆ 叱責ではなく理解を――10代の児童生徒を取り巻く環境因子へのアプローチ
フリースクールに通う児童生徒には、それぞれに不登校を選択せざるを得なかった背景があります。例えば、いじめや友人関係の歪み、学業へのプレッシャーや成績不振、複雑な家庭環境、非行問題、あるいは精神的・身体的な健康課題や、予期せぬライフイベントによる大きな心理的負荷など、その理由は多岐にわたります。
彼らにとって「登校を続けること」は、これ以上自分の傷口を広げてしまうかもしれないという、不安が伺えるのです。その不安には、10代の本人だけの力では解決することが困難で、様々な「環境因子」が隠れています。
この背景に目を向けず、ただ「学校に行けないこと」の表面だけを捉えて登校を強要したり叱責したりすることは、逆効果になるばかりか、築き上げてきた信頼関係を根底から揺るがしてしまうことになります。精神保健福祉士の役割は、本人の内面だけでなく、それを取り巻く環境(学校、家庭、地域)との関係性を丁寧に紐解き、アプローチしていくことにあります。
◆ 「学校の代わり」ではなく、心と学びを立て直す【安全基地】として
フリースクールは、子どもたちにとって単なる「学校の代わり」ではありません。彼ら彼女らの心と学びを基礎から立て直すための【安全基地】としての役割を果たします。学校という枠組みが合わなかった子どもたちが、信頼できる大人たちと出会い、自分のペースで、ゆっくりと回復を遂げ、再び社会とつながる力を育んでいく場所なのです。
私たちの目指す支援のゴールは、児童生徒が本来の「自分らしさ」を取り戻し、安心して成長できる場所を提供することです。そして、将来的に学校へ戻るかどうかに固執するのではなく、その子一人ひとりに合った「未来へつながる力」を共に育てていくことこそが、精神保健福祉士の役割です。
◆ あなたの人生経験や思いやりが、誰かの未来を支える強みになる
支援の現場で求められるのは、完璧なマニュアルではありません。目の前の当事者が抱える生きづらさに寄り添い、共感しようとする誠実な姿勢です。もしあなたの中に、「誰かの役に立ちたい」「人の心に寄り添いたい」という熱意があるなら、その想いこそが精神保健福祉士としての強力な強みになります。
これまでの社会人としてのキャリアや豊かな人生経験、そして葛藤から得た視点。 そのすべてが、精神保健福祉士としての確かな専門技術へとつながっていきます。
当校では、お仕事や家庭をお持ちの社会人の方でも、無理なく一歩を踏み出せる学習環境を整えています。
「仕事帰りに話を聞きたい」「土日にじっくり相談したい」「遠方なので自宅から参加したい」など、皆さまのご希望に合わせた個別相談・入学説明会を随時開催しています。平日の午後や土日の実施はもちろん、オンラインでの対応も可能です。まずは入学資格(実務経験や既卒要件など)の事前確認も含め、お気軽にご相談ください。