安全を守ることと、その人らしさを支えること。現場での葛藤から見えた社会福祉士の役割
みなさん、こんにちは。 社会福祉士科教員の下林です。
本校の社会福祉士科(一般養成施設)には、これまでさまざまな社会人経験を積まれてきた方、ご家族のケアや介護をきっかけに福祉の道を志した方など、実に多様なバックグラウンドを持つ学生の皆さんが通われています。
お仕事やご家庭での役割と両立しながら、アットホームで温かい雰囲気のなか、互いの経験を尊重し合って「人の心と生活を支える専門性」を学んでいます。
今回は、私が以前相談員として勤めていた機能訓練メインのデイサービスで出会った、ある男性利用者様とのエピソードをお話ししたいと思います。

◆ 頼もしかった男性利用者様と、思いがけない出来事
そのデイサービスは、「自宅での生活を維持したい」「もう少し歩けるようになりたい」と、前向きにリハビリへ励む方々が多く通う場所でした。
その中に、とても気配り上手な男性の利用者様がいらっしゃいました。
お茶の湯のみの回収やお昼ご飯の片付け、さらにはフロアの掃除まで、 「自分は他の人より元気だから」 「身体を動かすことがリハビリになるから」 と、いつも積極的に手伝ってくださいました。
周囲の利用者様からも、私たち職員にとっても、本当に頼もしく温かい存在でした。
しかしある日、湯のみを片付けている最中にその方が転倒し、お盆ごとひっくり返してしまう出来事起きました。
幸いお怪我はありませんでしたが、湯のみのほとんどが割れてしまいました。
周りからは「気をつけなあかんなあ。元気やからって張り切りすぎたんや」という声も上がりましたが、ご本人はめげることなく、その後もお手伝いを続けておられました。
ところが数日後、今度は昼食の片付け中に足をとられ、食器を持ったまま別の利用者様にぶつかってしまったのです。
双方にお怪我はなかったものの、ぶつかられた方からこんな言葉が掛けられました。
「前から思ってたけど、ちょっと危ないねん。もうやめてくれへん?」
◆ 奪われてしまった自信と、奥様の言葉から見えた「生きがい」
その一言は、男性の心に深く刺さってしまったようでした。 それ以来、あれほど積極的だったお手伝いを一切されなくなってしまったのです。
表情は日に日に沈みがちになり、 「もう自信がなくなった」 「ここも辞めようかな…」 と漏らされるようになりました。
以前の生き生きとした姿からは想像もできないほどの落ち込みようでした。
私たち職員は負担の少ない掃除や軽作業などを提案してみましたが、なかなか前向きなご返事をいただくことはできませんでした。
そこで、これまでの経緯をご自宅の奥様にお伝えすることにしました。 すると、奥様から思いもよらないお言葉が返ってきたのです。
「えっ、あの人がデイサービスでお手伝いをしていたんですか?」
奥様は大変驚かれていました。
詳しく伺うと、ご自宅では昔ながらの亭主関白で、家事などはほとんどされない方だったそうです。 そして奥様は、少し感慨深そうにこう続けられました。
「転倒のことは聞いていましたけど、デイサービスに通いだしてからすごく顔がいきいきしていて。ここに通うのが生きがいになっているんだなって思っていたんです」
デイサービスでの「手伝い」は、単なる作業ではなく、その方にとって自分の存在を示す大切な「役割」であり、「生きがい」そのものだったのだと、その時初めて気づかされました。
◆ 葛藤のなかで気づいた「できること」を支える支援の本質
結局、その方はその後すぐに大きな病気が見つかって入院され、他の施設へと移られることになりました。 それ以降、その方とお会いすることはできていません。
そして後になって、その病気の影響で足が弱っていたのだということが分かりました。
「あの時、安全面ばかりに気を取られず、もっと違う関わり方ができていたら……」
今でもこの出来事を思い出すたびに、胸が締め付けられるような想いになります。
福祉の現場において、利用者様の安全を最優先に考えることは当然の責務です。
しかしそれと同時に、その人が何を大切にし、どのような役割を持って生きたいと願っているのか——。
その「想い」や「存在意義」を尊重し、できることを奪わない支援(ストレングスに基づいた相談支援の視点)がいかに重要であるかを、私はこの男性から教わりました。
デイサービスは単に時間を過ごす場所ではなく、その人らしさを取り戻し、自分らしく生きるための場所なのです。
◆ あなたの歩んできた人生経験や優しさが、誰かの「自分らしさ」を支える力になる
福祉の仕事に「完璧な正解」はありません。 だからこそ、現場では悩みや葛藤が生まれます。
しかし、その葛藤に向き合い、「一人ひとりの声にならない想いに寄り添いたい」と考えるプロセスこそが、社会福祉士としての専門性であり、大きなやりがいにつながっていきます。
あなたがこれまでに培ってきた人生経験、ご家族や周囲の方と向き合ってきた優しさ、そして「誰かの役に立ちたい」という温かい想いは、将来、支援を必要とする方々の背中を支えるかけがえのない「強み」になります。
「これまでの経験を活かして、新しい一歩を踏み出したい」 「自分にどんな関わりができるのか、福祉の専門性を学びたい」
そんな想いを抱いている方は、ぜひ一度、本校の個別相談会やオープンキャンパスにお越しになりませんか?
本校(一般養成施設)では、仕事や家庭と両立しながら学べる環境を整えており、お忙しい方向けの【オンライン個別相談会】も随時開催しております。
また、「ご自身の経歴が入学資格を満たしているか」といった事前の確認やご相談も親切・丁寧にお応えしております。
あなたの第一歩を、教職員一同、心よりお待ちしております。