施設での面会風景から学ぶ、相談援助の本質とこれまでの人生経験が活きる社会福祉士の魅力
皆さん、こんにちは。社会福祉士科教員の由良です。
当校には、これまでの社会人経験やご家庭でのケア経験、様々な人生の歩みを経て「誰かの役に立ちたい」「社会福祉士の資格を得て長く社会に貢献したい」と志す多様な学生たちが集まっています。
お仕事やご家庭と両立しながら、互いの経験を尊重し合い、温かい雰囲気の中で日々学びを深めています。

今回は、私が福祉の現場で出会った利用者Aさんと、その義理の娘さん(お嫁さん)との関係性の中から感じた、心温まるエピソードをお話しさせていただきます。
◆ 月曜日の昼下がりにくり広げられる、お二人だけの特別な「儀式」
施設でお世話をしていたAさんは、95歳の女性。とても上品な佇まいと、穏やかな雰囲気をお持ちの方でした。
そして毎週月曜日の午後になると、決まって面会に訪れる方がいました。
65歳になる義理の娘さんです。
お二人ともどこか凛とした空気をまとっていらっしゃり、並んで座ってお話しされている姿は、いつもとても絵になる光景でした。
義理の娘さんと過ごされているときのAさんは、普段よりも表情が和らぎ、どこか安心されたご様子を見せてくださいます。義理の娘さんも大変よく笑う方で、お二人は本当に仲睦まじいご関係でした。
そんな面会時間の終わりには、毎回必ず行われる“ある儀式”がありました。
義理の娘さんが持参したタッパー容器をAさんに手渡し、中に入っている手作りの料理を、Aさんが一口味見されるのです。
そして味見のあと、Aさんは決まってこうおっしゃいます。
「〇〇入れるの忘れてる?」
すると義理の娘さんは、柔らかく微笑みながらこう返されるのです。
「ほんまや。忘れてるわ」
この温かいやりとりが、毎週月曜日に繰り返されていました。
◆ 「あえて直してもらう余白を残す」――言葉の奥に込められた感謝と優しさ
ある日、私はふと気になり、義理の娘さんにその理由をお尋ねしてみました。
すると、少し照れくさそうにしながら、こんな言葉を明かしてくださいました。
「あれ、ワザとなんです」
義理の娘さんが嫁いで来られた当時、Aさんは大変厳しいお義母様だったそうです。しかし、その厳しさの中で、料理のこと、家のこと、そして人としての生き方など、本当に多くのことを教えてもらったとお話ししてくださいました。
「ほんまは、感謝してるんです」
静かにそう語る義理の娘さん。
しかし、ご主人、そして息子さん(義理の娘さんの夫)を亡くされてから、Aさんに認知症の症状が出始めました。
少しずつできていたことができなくなり、小さくなっていくお義母様の姿を見るのは、とてもお辛かったと言います。
だからこそ――。
「Aさんには、ずっと“まだまだやね”って言ってほしいんです」
その言葉を聞いたとき、私は胸がいっぱいになりました。
義理の娘さんは、あえて味付けを少し変えて、“直してもらう余白”を残していたのです。
特にAさんこだわりの「ぜんざい」には、あえて隠し味の昆布茶を入れずに持って来られる。
それこそが、長年連れ添ってきたお二人だけの大切なコミュニケーションの時間でした。
月曜日の昼下がり、Aさんのお部屋からは楽しそうな笑い声が聞こえ、最後に決まってAさんの声が響きます。
「……まだまだやね」
その一言には、かつて教え導いてきた人としての誇りと、目の前の相手を愛おしく想う深い優しさが込められているように感じられました。
◆ 人生や関係性に寄り添うこと――社会福祉士として大切な視点
福祉の現場では、お身体のケアや安全な生活の管理といった技術面・環境面の支援が非常に重要です。
しかし、それと同じくらい大切なのは、その方が歩んできた「人生の物語」や「人との大切な関係性」に寄り添う相談援助の視点です。
社会福祉士の仕事は、単に生活上の困りごとを解決するだけではありません。
今回のように、目には見えにくい「人と人との想いの繋がり」や「積み重ねてきた関係性」を深く理解し、それが途切れることなく続いていくように支えていく役割を担っています。
Aさんと義理の娘さんのやりとりは、単なる食事の味見ではなく、長い年月の中で育まれたかけがえのない絆の表現でした。
支援者としてそうした「当事者視点」や「自己決定の背景にある想い」に気づく力は、これまでの人生で人と誠実に向き合ってきた経験や、ご家族・周囲をケアしてきた経験があるからこそ磨かれるものです。
福祉の仕事には、こうした人と人とのつながりの中にある「ぬくもり」に直接触れられる、かけがえのないやりがいがあります。
◆ あなたの人生経験が、誰かを支える大きな力になります
「これまでの社会人経験や家庭での経験を活かして、新しいステップを踏み出したい」 「人と心で向き合える、一生ものの専門職に挑戦したい」
当校では、これまで歩んできたそれぞれの人生経験を「強み」に変え、社会福祉士として羽ばたいていく学生たちがたくさんいます。